エイジレスの303回 種子の寿命をコントロール

 

 

 食用植物の種を長持ちさせ、発芽率を高くすることは、経済的側面だけでなく、食料自給の上でも重要なことです。

 

 今回のお話は、種子の寿命をコントロールできるようになったとのお話です。

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 種子が発芽するには、空気、水、適当な温度が必要です。

 

 しかし、地上に落ちた形成直後の種子は、このような生育に適した条件下であってもすぐには発芽しないことが、多くの植物種でみられます。

 

 この性質は「休眠性」と呼ばれ、植物が過酷な環境の変化を乗り越え、子孫を繁栄させるために重要です。

 一方で、作物生産においては、休眠性が高いことやばらつきによる不発芽、不斉一な発芽は好まれません。

 

 これを防ぐために市販されている種子には、乾燥種子を一時的に吸水させた後、発芽が生じる前に種子を再び乾燥させる「プライミング」という処理が施されています。

 

 しかし、プライミング処理には副作用的に種子寿命を減少させる場合があり、問題になっています。

 

 そこで、プライミングによる種子寿命の減少の分子機構の解明が求められていました。

 

 今回、理研を中心とする共同研究グループは、シロイヌナズナの標準系統Col-0 と長命系統Est-1を用いた遺伝子発現の比較から、「ブラシノステロイド」と呼ばれる植物ホルモンが種子寿命の減少に関連があることを示しました。

 

 プライミング処理中にブラシノステロイド処理をすると種子寿命の減少が促進され、逆にブラシノステロイドの内生量が低下した変異体やブラシノステロイド生合成阻害剤処理をした種子では、種子寿命の減少が抑えられることが分かりました。

 

 これらのことから、ブラシノステロイドが種子寿命を減少させる原因の一つであることが分かりました。

 

 さらに種子寿命の減少には、ブラシノステロイドが種皮の透過性を増大させることが関連していることも分かりました。

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 種子のばらつきをなくすため「プライミング」という人為的操作をした結果、種子の寿命が短くなるようです。

 

 種子にとっては、迷惑な話だったと思いますが、経済性を考えると、仕方なかったと思います。

 

今回の研究成果によって、寿命が延びるようですので、とりあえずは、めでだしです。