エイジレスの300回 オートファジーが腸再生に必要不可欠

 

 

 オートファジー (Autophagy) は、細胞が持っている、細胞内のタンパク質を分解するための仕組みの一つです。

 

 自食(じしょく)とも呼ばれます。

 

 酵母からヒトにいたるまでの真核生物に見られる機構であり、細胞内での異常なタンパク質の蓄積を防いだり、過剰にタンパク質合成したときや栄養環境が悪化したときにタンパク質のリサイクルを行ったり、細胞質内に侵入した病原微生物を排除することで生体の恒常性維持に関与しています。

 

 このほか、個体発生の過程でのプログラム細胞死や、ハンチントン病などの疾患の発生、細胞のがん化抑制にも関与することが知られています。

 

 生命維持への重要な関与が次々と明らかにされるオートファジーですが、今回は、腸の維持・再生にも重要な働きをしているとのお話です。

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 オートファジーは、細胞内の変性タンパク質やダメージを受けた小器官を分解する機構であり、生体の恒常性維持に重要です。

 

 同機構の異常が様々な疾患発症の原因になることも数多く報告されています。

 

 近年、増加傾向にある炎症性腸疾患(IBD)の発症にもオートファジーが関与し、ヒト及びマウスにおけるオートファジー関連遺伝子 Atg16L1 の変異が、パネート細胞注1)からの抗菌ペプチド産生低下等を介してクローン病発症に関与することが報告されています。
 

 腸上皮幹細胞(ISC)は腸上皮の源となる細胞です。ISC は絨毛陰窩にパネート細胞と隣り合わせに存在し、高い自己複製能と上皮細胞への分化能をもち、2-5 日ですべての腸上皮細胞を新しいものに入れ替えます。


一方、腸上皮再生の起点となる ISC におけるオートファジーの役割は、これまで不明でした。

 

【ポイント】
・オートファジーは、細胞内タンパク質分解機構の1つであり、生体の恒常性維持に重要です。

オートファジーの異常は様々な疾患発症に関与します。
 

・ 腸上皮幹細胞は、腸上皮細胞を生み出す源の細胞です。
 

・ 本研究では、腸上皮幹細胞のオートファジーが活性酸素種(ROS)等の生産調節等を介して、腸上皮幹細胞の維持と腸上皮損傷後の再生に必要不可欠なことを見出しました。


・ この研究成果は、腸管障害疾患の新たな治療法開発につながることが期待されます。

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 腸の表面の細胞は2~5日で入れ替わるぐらい、活発に細胞分裂を繰り返しているので、オートファジーが正常に働いていることがとっても重要なようです。

 

 逆にいれば、少々傷ついても、オートファジーが正常なら、すぐに治るということです。

 

 加齢やストレスで、オートファジーの働きが低下します。

 

 長生きやガン予防のためにも、オートファジーの働きを高めることをお勧めします。

 

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