エイジレスの298回 ペンギンにウェブカメラを持たせて発声行動を調べる

 

 

 世の中、何のために研究しているのか良く分からないことに取り組んでおられる研究者の方は、たくさんおられます。

 

 日本では、国自体に余裕がないのか、官僚や政治家に遊び心を持つ人たちが減ってきているためなのかわかりませんが、成果主義的な研究課題でないと、文科省がお金を出してくれないので、面白い研究は少なくなってきているような感じです。

 

 しかし、アメリカやヨーロッパでは、伝統的に、民間の寄付による研究なんてのが成立しているため、研究課題の多様性は、凄いものがあります。

 

 今回のお話も、そんな多様性の中から出てきたテーマに関するお話です。

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 亜南極諸島と南極地域で見つかっているジェンツーペンギンは、主にオキアミと魚類を集団で捕食している。

 

 しかし、このペンギンの外洋における採餌場は簡単に近づけないため、採餌旅行の際に用いる発声レパートリーの研究が行われていなかった。

 今回、Won Young Leeたちの研究グループは、南極のキングジョージ島に生息するジェンツーペンギンの2回の繁殖期(2014~2015年、2015~2016年)にわたる採餌行動をジェンツーペンギンに取り付けたビデオカメラで記録した。

 

 Leeたちは、これによって10個体の沖合での鳴き声(598例)を収集し、その音響特性と行動状況を分析した。

 

 その結果、そうした沖合での鳴き声の約半数で、鳴き声を発してから1分以内に集団が形成されたことが分かった。

 

 また、沖合で鳴き声を発する前後で採餌潜水の占める割合と獲物の捕獲率に有意差は見られなかった。

 

 このことは、この鳴き声が食料に関係するのではなく、仲間を呼ぶことに関係していることを示唆している可能性がある。

 

 これに対して、Leeたちは、沖合で鳴き声を発したペンギンが浅く短い潜水をして、特定の場所にとどまるのではなく、新たな場所へ移動したことを観察した。

 

 Leeたちは、ペンギンが採餌旅行の際に群れを形成するために音声コミュニケーションを利用しているという仮説を立てている。

ジェンツーペンギンの水中生活について解明を進めるためには今後も調査を続ける必要があるとLeeたちは指摘している。

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 ジェンツーペンギンにWebカメラを持たせたところ、鳴き声を発してから、1分以内に集団が形成されることがわかったらしいです。

 

 この情報が役に立つ方は、日本は、ほとんどいないと思いますが、Leeさんたちは、今後も調査を続ける必要があると言っております。

 

 実に、素晴らしいことだと思います。

 

 現在、絶滅危惧種が30,000種ほどあると言われていますので、そんな動物さんたちを救う手立てにつながってくれたら、いいなあと思った次第です。