エイジレスの296回 乳児の敗血症を防ぐ方法
プロバイオティクスとは、腸内フローラ(腸内細菌叢)のバランスを調整し、人の身体に有益な働きをしてくれる生きた微生物のことです。
乳酸菌やビフィズス菌も、プロバイオティクスの一種に含まれます。
プロバイオティクスは、ギリシャ語で「生命の益になるもの」を意味する言葉です。
「生命の害になるもの」を意味するアンチバイオティクスと対峙するものとして、1989年にイギリスのフラー博士に提唱されたことが誕生のきっかけです。
近年、健康の分野で大きな注目を集めており、プロバイオティクスが含まれるヨーグルトや乳製品飲料といった食品も多数販売されています。
習慣的にプロバイオティクスを摂取すれば、高い健康効果が期待できるといえます。
また、プロバイオティクスは医療の現場でも活用されており、乳糖不耐症や便秘、急性胃炎やクローン病、リウマチ関節炎といった疾患の予防・改善にも効果があるといわれています。
プロバイオティクスと同時に摂取したいのがプレバイオティクスです。
プレバイオティクスとは、いわゆるオリゴ糖や食物繊維のことです。
オリゴ糖や食物繊維は、乳酸菌やビフィズス菌の栄養源となる成分です。
よって、オリゴ糖や食物繊維を摂取すれば、より善玉菌の働きが活性化します。
つまり、プロバイオティクスとプレバイオティクスを同時に摂取すれば、より高い健康効果が期待できるというわけです。
このプロバイオティクスとプレバイオティクスの組み合わせは「シンバイオティクス」と呼ばれ、機能性食品においてもよく取り上げられています。
なお、シンバイオティクスの機能性食品にこだわらなくても、りんごとヨーグルトといった組み合わせや、ぬか漬けなどの善玉菌と食物繊維の両方を兼ね揃えた食品を摂取することで、シンバイオティクスの効果を期待することができます。
今回のお話は、そんな「シンバイオティクス」が乳幼児の敗血症にどういう効果があるかの調査についてです。
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敗血症は、細菌感染症の重篤な合併症で、そのために全世界で毎年およそ100万人の乳児が命を落としているが、その大部分は開発途上国の乳児だ。
プロバイオティクス細菌は免疫系の維持に役立ち、乳児敗血症の予防法となる可能性のあることが提唱されているが、新生児を対象とした試験としては、わずかな数の小規模な試験しか行われていなかった。
今回、Pinaki Panigrahiたちの研究グループは、インドのオリッサ州の149の村で実施された合計4,556人の乳児を対象とする大規模な無作為化プラセボ対照比較試験の結果を報告している。
この地域密着型試験では、フォローアップのコーディネーターに地元のボランティアを採用した。
この試験で、新生児は生後2週間以内にプラセボまたはシンバイオティクス(フラクトオリゴ糖と腸内で有効に定着する細菌株として選ばれたLactobacillus plantarum)を7日間投与された。
そして60日間のフォローアップを経て調査を行ったところ、シンバイオティクスを投与された乳児の5.4%とプラセボを投与された乳児の9%が死亡し、あるいは敗血症を発症していた。
(今回の試験で、死亡した乳児の総数は10人で、6人がシンバイオティクスを投与され、4人がプラセボを投与されていた。)
Panigrahiたちは、今回の試験で、(妊娠35週未満で誕生した)早産児や誕生時の病状が重篤な新生児のように敗血症の発症リスクの高い者が対象になっていない点を指摘している。
今回の試験結果が、開発途上国の敗血症リスクのある乳児集団全てに当てはまるのかどうかを判断するには、さらなる試験が必要になると考えられている。
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今回の結果だけでは、はっきりしたことはわからないようですが、シンバイオティクスを投与すると、4~5%程度、敗血症の発症が抑えられるようです。
シンバイオティクスは、敗血症だけでなく、健康維持に効果があることは、明らかですので、積極的に摂取したほうが良さそうです。