エイジレスの280回 腫瘍(がん)細胞と結合する人工レクチン

 

 

 がん細胞だけに抗がん剤を届けて、正常細胞への副作用を少なくしようという思想は、かなり以前からあって、研究も実用段階に来ているようです。

 

 今回は、そんな研究の一つで、がん細胞にだけ抗がん剤を届けるレクチンという物質を、人工的に設計しようとするお話です。

 

(はっきりって、難しいです)

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 Mitsuba-1を作るために、まず既知の2000以上のべータ トレフォイル構造を計算機で解析し、溶液中での安定性に富む、正対称形の骨格が選ばれました。

 

 続いてMytiLec-1のポリペプチド鎖内に3か所ある糖鎖結合サブドメイン(A-B-C)のうち、糖鎖結合性の最も強いAサブドメインを鋳型とし、そのアミノ酸を40%改変したA'-A'-A'型(図A)の人工レクチン「Mitsuba-1」を設計しました。Mitsuba-1タンパク質は、大腸菌に合成させて作り出しました。

 

(中略)

 

 今後も、計算機科学と分子生物学を組み合わせて、がん細胞や幹細胞に出現する糖鎖に結合する人工レクチンのデザインを続けていきたいと思います。

 

 大腸菌を用いて構造上安定したレクチンを作出する技術は確立しつつあり、ナノ分子や薬剤を人工レクチンと複合体化した新素材タンパクを作れる条件を追求し、糖鎖とレクチンを医科学研究と医療の発展に役立てたいと考えています。 

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 人工的にレクチンを設計、製造して、そのレクチンにがんのある場所まで、お薬を運んでもらおうという試みですが、天然物と違って、不純物もなく、レクチン自体が安定しているため、ポーター(運び屋)として優れた物質となる可能性が高いと思われます。
 
 最近では、免疫療法による治療法などが実用化されていますが、まだ、抗がん剤による治療が主流です。
 
 なので、副作用さえ無くなれば、治癒率も高くなって、患者さんの負担も少なくなります。
 
 ということで、今回の研究成果が、早く実用化されることを祈念するばかりです。