エイジレスの271回 カビによる肝障害悪化メカニズム

 

 

 現在、日本における肝がん(肝臓がん)の主な原因は、肝炎ウイルスの感染(いわゆるウイルス性肝炎)ですが、欧米ではアルコールの過剰摂取によるアルコール性脂肪性肝炎(ASH)が大きなウエイトを占めています。

 

 さらに近い将来は、世界的にメタボリックシンドロームの肝臓での表現型である非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が主な原因になるといわれています。

 

 ASHやNASHは、断酒や生活習慣の改善以外に有効な治療法は確立されておらず、その病態の解明や新薬の開発が課題となっています。

 ASH/NASH患者においては、過度のアルコール摂取や遊離脂肪酸によって十二指腸のバリアがボロボロになり、腸内にいた真菌(カビ)や大腸菌が肝臓に到達することが報告されています。

 

 特に、病原性真菌の一種であるカンジダ菌が増えることが今年報告されました。

 

 今回の発見により、ASH/NASHの患者における肝障害が、病原性真菌の産生する活性酸素を介して増悪する新たな発症機構の存在が浮かび上がりました。

 

 活性酸素を抑制する薬剤の投与により肝細胞でのTG2の核移行を阻害するなど、TG2の核局在を標的とした肝障害を抑える新たな治療法の開発が期待できます。