アルツハイマー病に関係するタンパク質凝集
認知症の代表的な疾患であるアルツハイマー病患者の脳神経組織における顕著な特徴の一つは、細胞外のアミロイド β(ベータ)の蓄積です。
アミロイドβは、若い方を含めて、誰でも発生していますが、脳内の血流が正常であれば、有害なアミロイドβは、体外に排出されるため、脳内に蓄積すること、はありません。
今回の論文は、もう一つの特徴として、言われている「タウ・タンパク質による神経原線維変化」についてです。
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脳内におけるタウ繊維の異常な凝集体の存在は、神経変性と認知症に関連している。
タウ繊維は、神経変性疾患の発生の仕組みを解明する手掛かりとなる可能性があり、神経変性疾患の治療薬の重要な標的となっている。
ところが、分子構造を高分解能で解明できていないために神経変性におけるタウ繊維の役割の解明が遅れている。
今回、Sjors Scheres、Michel Goedertたちの研究グループは、この問題点に取り組むため、アルツハイマー病の確定診断を受けた女性(74歳)の脳から採取したタウ繊維の初めての低温電子顕微鏡構造を示している。
そこには、独特な対らせん状細繊維と直線状細繊維が詳細に示されており、脳内でこれらの繊維から凝集体が形成する理由を説明するうえで役立つ可能性がある。
こうした構造は、低温電子顕微鏡法という画像化技術によって決定された。
この方法では、非常に低い温度で試料を観察して、患者由来の物質から得られたアミロイド繊維の特性を原子レベルで調べることができる。
Scheresたちは、低温電子顕微鏡法がさまざまな種類の神経変性疾患の基盤となる分子機構の研究に新しい可能性を開くと考えている。
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前述したアミロイドβについては、研究が進んでいて、予防方法もわかってきているようですが、アルツハイマー病のもう一つの特徴であるタウ・タンパク質(タウ繊維)については、まだわからないことが多いようです。
テレビなどで、アミロイドβを脳内から排出すると、アルツハイマー病を予防できるみたいなことを言っている番組はありますが、タウ・たんぱく質に言及している番組を見たことはありません。
なので、アミロイドβの話がでてきたら、あくまでも、原因の一つが減るだけだよな~ぐらいの感覚で受け止めておられた方が宜しいかと思います。