エイジレスの242回 エタノールが植物の耐塩性を高める

 

 

 塩害は、かんがい農業による塩類集積や海沿いの地域で生じ、農作物の生産に大きな悪影響を及ぼしています。

 

 植物は高濃度の塩によるストレス(高塩ストレス)にさらされると、根からの水分の吸収の阻害や光合成の低下などが生じます。

 

 また、活性酸素の蓄積が誘導され、細胞死が引き起こされます。

 

 世界の人口が増え続けている現在で持続的な食糧生産を維持するためには、塩害に強い作物や肥料の開発など早急な問題解決が求められています。

 

ということで、塩害対策の最新報告です。
--------------------------------------------------

<研究の内容>

 研究グループはシロイヌナズナを用いた解析から、エタノールを投与する処理によって耐塩性が強化されることを発見しました。

 

 耐塩性強化のメカニズムを明らかにするために、網羅的な遺伝子発現解析を実施した結果、高塩ストレスによって発生する活性酸素の除去に働く遺伝子群の発現が、エタノール処理によって増加することがわかりました。

 

 また、活性酸素の一種である過酸化水素を消去するアスコルビン酸ペルオキシダーゼの活性も増加することを明らかにしました。

 

 実際にシロイヌナズナでエタノール処理が活性酸素の蓄積を抑制することが示されました。

 

 また、イネでもエタノール処理によって活性酸素の蓄積が抑制され、耐塩性が強化されることを見いだしました。

 

 これらの結果から、単子葉植物・双子葉植物のいずれにおいても、エタノールは活性酸素の蓄積を抑制することによって耐塩性を強化することが示されました。

--------------------------------------------------

 国連大学(UNU)の新しい評価によると、塩は、世界のかんがい地の5分の1を劣化させており、年間およそ273億USドルの経済損失を引き起こしています。

 

 過去20年間、毎日、75カ国の乾燥地帯や半乾燥地帯で平均2000ヘクタールの農地が塩の蓄積による影響を受けてきています。

 

 そのような土地は現在、フランスの国土に匹敵する約6200万ヘクタールに広がっているとのこと。

 

 このため、頑張って、ジャングルや乾燥地帯の農地化に取り組んでいるものの、作物ができない農地も、どんどん増えています。

 

 今回の研究結果が、世界の農業に寄与されることを祈念するばかりです。