エイジレスの239回 植物に酢酸を与えると乾燥に強くなる
昔から、薄めたお酢をスプレーで、植物にかけると育ちが良くなるなんて、民間療法的な手法はありました。
確かに、効果がある時もありますが、万能ではないようで、全く効果が実感できないことや、逆に、枯れてしまったなどのお話もあります。
つまり、お酢が植物に作用するメカニズムがよくわかっていないままやってみても、結果が安定しないということのようです。
そこで、今回は、学術的に、お酢の効能を調べてみたというお話です。
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<研究の背景と経緯>
地球温暖化などの環境変動による急激な乾燥や干ばつの発生は、トウモロコシやコムギをはじめとする作物生産量の低下や砂漠化の拡大など、世界規模で大きな問題となっています。
これまでに、植物の乾燥耐性を強化するための方法として、遺伝子組み換え技術が用いられてきました。
しかし、これらの作出には時間や費用がかかることから、より簡便かつ安価に利用できる植物への乾燥耐性強化技術の開発が求められています。
研究グループはまず、モデル植物であるシロイヌナズナを用いて、乾燥処理による植物体内の代謝変化を調べました。
その結果、乾燥時には、生命活動に必要なエネルギーを得るための中心的な代謝経路である解糖系注1)が強く抑制されるだけでなく、酢酸の生合成量が特異的に増加することを発見しました。
酢酸は解糖系の中間代謝物であるピルビン酸から生合成されることから、乾燥処理により、植物体内でダイナミックな中心代謝経路の変化が起きていることがわかりました。
(中略)
シロイヌナズナ以外のイネ、トウモロコシ、コムギ、ナタネなどの有用作物についても、酢酸を与えることにより乾燥耐性が強化されることを確認しました。
これらは、
1)植物の酢酸-ジャスモン酸経路を介した新規乾燥耐性機構の発見、
2)植物の乾燥応答をエピジェネティックな因子が直接制御していること、
3)酢酸-ジャスモン酸を介した乾燥耐性システムが幅広い植物種に進化的に保存されていることを示す初めての成果です。
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今回のお話は、農業全体でも使える話ですし、個人的なお庭の植物にも使えるお話です。
実際の応用方法は、いずれ公開されるかと思いますので、必要な方は、心待ちにされて下さい。
因みに、普通のお酢は、不純物が多すぎて、効果が安定するのは難しいと思います。
試してみたい方は、ドラッグストアなどで、高純度の酢酸をお買い求めください。