エイジレスの237回 南極の陸上生物多様性を無視してはならないらしいです
南極地域の生物は、その多くが海域、沿岸域に生息・生育します。
南極の海では、海底から湧き上ってくる栄養分を利用して爆発的に増殖した植物プランクトンがナンキョクオキアミに食べられ、オキアミはクジラやペンギン、アザラシといった南極を代表する生物たちの餌となっています。
陸上では鳥類の排泄物等を養分として、コケ類や地衣類が生育しています。
南極地域の生態系は、他の温暖な海域の生態系に比べると生物量は多いものの、生物種数が少ないため、一部の生物の変動が生態系全体に大きな影響を与えるものと懸念されています。
ということで、不当地帯の生物を無視するな~という論文です。
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この不凍地帯は、南極大陸のわずか1%にすぎないが、陸上生物多様性のほぼ全てが揃っている。
ところが、大半の研究者から注目されず、気候変動が南極の生物種、生態系、それらの今後の保全に与える影響を解明する上で重大な欠落部分が生じている。
気候変動が南極の氷床と海水準に与えた影響の研究には多くの資源が投入されてきた。
これに対して、気候変動とそれに関連した氷床の融解が南極の在来種(アザラシ類、海鳥類、節足動物、線形動物、微生物、植生を含む)に与える影響の評価は比較的最近になって始まったばかりだ。
今回、Jasmine Leeたちの研究グループは、今後の気候変動の予測において南極半島での変動が最も大きいことを明らかにした。
気候変動に関する政府間パネルの2つの気候強制力シナリオのうちの強烈なシナリオによると、不凍地帯の面積が21世紀末までに17,000 km2以上増加する可能性がある(約25%の増加)。
南極大陸で不凍地帯が3倍増するという予測に基づくと、生物多様性生息地の利用可能性と連結性が大きく変わる可能性がある。
予想される生物多様性に対する負の影響が、メリットを上回るのかどうかは分かっていないが、南極での生息地の拡大と連結性の増大は、生物多様性にとってプラスの変化だと一般に解釈される可能性がある。
Leeたちは、こうした変化から最終的には地域レベルの生物群集均質化の進行、競争力の弱い生物種の絶滅、侵入種の分布拡大につながる可能性があるという仮説を示し、温室効果ガスの排出量を削減でき、人間活動による気温上昇を摂氏2度未満に抑えられれば、不凍の生息地とそれに依存した生物多様性に対する影響を軽減できる可能性があると結論づけている。
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地球温暖化の影響は、特に北極において、顕著に表れていて、これまで、船では通過できなかった北極海が、夏の間は、通れるようになっています(北極海航路)。
南極の場合は、巨大な氷棚が壊れたり、氷河の流れが速くなったなどの報告が上がっています。
ところが、生物に対する影響については、あまり研究が進んでいない現状があるようです。
人に対する影響が小さいものは、どうしても、後回しになってしまいますが、南極の生物については、特に、遅れているということです。
研究が進んだからと言って、生物を絶滅の危機から救うことが出来るわけではありませんが、少なくとも、何らかの手は打てますので、研究予算に対する寛大な国が増えてくることを祈念するほかりません。