エイジレスの229回 傷の修復と発がんは紙一重? 胃がんの発生メカニズムに迫る!

 

 

 ガン細胞が産まれる原因の一つに、正常細胞の異常があります。

 

 遺伝子のコピーミスや、正常細胞の欠損を補うために生まれるとか、色んな要因が言われています。

 

 今回は、全ての細胞の元である幹細胞が原因であるとの話です。

 

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 人間の胃は、暴飲暴食やストレス、細菌感染などにより常に傷ついており、日々修復されています。

 

 一方で、これらの傷害にさらされ続けることで胃がんが発生してしまいます。

 

 金沢大学がん進展制御研究所 リサーチプロフェッサーNicholas Barker 博士の研究グループ(上皮幹細胞研究分野 村上和弘 助教)は、シンガポールA-STAR 研究所との共同研究により、自ら増殖しつつ胃を形作る様々な細胞を供給する、傷ついた胃の修復と再生に必要な組織幹細胞を特定しました。

 

 さらに、これらの細胞が異常になることにより胃がんが発生することを突き止めました。

 

 この成果は、平成 29 年 6 月 5 日(米国東部時間)、Nature Cell Biology 誌オンライン速報版にて公開されました。

  研究グループは、大腸、小腸、子宮など、いろいろな組織の幹細胞で発現しているLgr5 という遺伝子に着目し、胃体部で Lgr5 遺伝子が発現している細胞を、緑色蛍光タンパク質を用いて可視化できるモデルマウスを作りました。

 

 それらのマウスを使って詳しく解析した結果、胃体部にも Lgr5陽性細胞が存在していることを発見しました。

 

 さらにこれらの細胞は、傷害が起こった時には Wnt というシグナルに依存して盛んに分裂し、胃組織を形作る全ての細胞を産み出し、傷ついた胃を修復することがわかりました。

 

 これらの幹細胞を取り除いてしまうと、胃の組織構造がうまく再生されません。
 

 一方で、これらの Lgr5 陽性幹細胞でがん遺伝子を働かせることで、胃がんが発生してしまうことがわかりました(図)。

 

 実際のヒトの胃がんでも Lgr5 遺伝子は発現しており、このことは、傷ついた胃を修復・再生するのに必要な「組織幹細胞」が、一歩間違うとがんの親玉である「がん幹細胞」に変化してしまうことを示唆しています。

 今回の研究により、胃体部の組織幹細胞のみならず、胃がんの発生機序の一端が明らかとなりました。

 

 将来的に、これらの研究を発展させることで、胃がんの根本的な
治療法および効果的な抗がん剤の開発が期待されます。 

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 ということで、胃の傷を修復するときに、がん細胞が生まれているとのことですので、暴飲暴食で、胃を傷つけないようにしたほうが良さそうです。

 

 また、胃がんの原因にピロリ菌の存在が指摘されていますので、胃の中に、ピロリ菌がいる方は、さっさとやっつけてしまった方が宜しいかと思います。