エイジレスの227回 チンパンジーのためのエボラウイルス経口ワクチン
全世界のゴリラの約3分の1がエボラ出血熱によって死んでいます。
類人猿に対する一定種類の疾患の脅威はワクチンによって予防可能なのですが、ダート銃を用いる従来の投与法を熱帯の密林に低密度で生息する動物に適用することには困難を伴うとのことです。
そこで、解決策としてだされたので、次の論文です。
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今回、Peter Walshの研究チームは、10頭の飼育チンパンジーを用いてエボラウイルスに対するワクチンfilorab1の試験を行った。
そのうちの6頭については、鎮静状態でウイルスの経口投与が行われ、残りの4頭には筋肉内注射でワクチン投与を行った。
そして、投与後最長28日間にわたって、エボラウイルスに対する抗体の血中濃度の測定が続けられた。
この試験では、経口ワクチンを投与されたチンパンジーのエボラウイルスに対する抗体のレベルが上昇し、その上昇率が筋肉内注射でワクチンを投与されたチンパンジーの場合と非常によく似ていたことが明らかになった。
しかし、今回の研究では、ワクチン接種後のチンパンジーをエボラウイルスにチャレンジ感染させておらず、経口送達の防御効果を断定するにはさらなる研究が必要となっている。
Walshたちは、このワクチンの単回経口投与によって生じる免疫応答が、密林で発見することが難しい野生の類人猿の野外でのワクチン投与の1つの利点になる可能性があると主張しており、
野生の類人猿を用いた野外試験が必要であると同時にさらなる研究を重ねて経口餌を試作し、高温の森林という条件下でも利用可能な状態を維持できるようにワクチンの熱安定性を向上させる必要がある点を指摘している。
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絶滅危惧種が少なくない野生の類人猿ですが、人間と違って、病院も薬もないので、絶滅から救うには、人が何らかの手助けをする必要がありますが、野生であるだけに、対策は難しそうです。
研究している間にも、生息数が減少している現状を考えると、せめて、生息地が守られることを願うばかりです。