エイジレスの218回 電子スイッチで細菌を制御する
人は、細菌をうまく使って、食料や薬の製造などに利用してきました。
酵母菌による味噌や醤油、チーズなどの発酵食品は、今でも、幅広く利用されていますし、抗生物質は、細菌の働きなくしてはできません。
で、今回は、その細菌を電子スイッチで制御しようという画期的なお話です。
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細菌の電子制御が実証されたことを明らかにした論文が、今週に掲載される。
さまざまな細胞の遺伝的挙動を精密に制御できるようになったことで、工業的利用とバイオハイブリッドデバイス(例えば細胞を利用したバイオセンサー)への道が開かれることになると考えられる。
細胞の挙動を操作し、誘導する能力は、合成生物学によって向上した。
これまでのところ、光や磁気、電波を用いて遺伝子発現を制御する方法が実証されている。
今回、William Bentleyの研究チームは、電子的入力を用いることによっても細胞を制御できることを明らかにし、遺伝子発現を制御する天然の細菌タンパク質を電子信号によって活性化する「電子遺伝学的」回路を実証した。
Bentleyたちは、このシステムを利用して、遺伝子発現を制御し、細菌の遊泳を誘導した。
また、Bentleyたちは、1つの細菌群が電子信号を解釈し、この情報を別の細菌群に伝えて、その遺伝子発現を変化させる細胞情報中継装置を作製した。
今回の研究は、原理実証研究であり、現在のところ直接応用は行われていないが、細胞の遺伝子発現と挙動を電子制御することは、精密かつ迅速な応答が必要な状況において役に立つ可能性がある。
こうした状況には、工業的利用可能性や生物工学的利用可能性(例えば特定の産物を得るために代謝的に改変された細菌を用いる場合)が含まれているかもしれない。
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現在のところ、基礎的な実証実験の段階なので、応用は、ずっと先のことになるかと思いますが、電子的な信号で、細菌が制御できると、細菌の利用範囲が大きく拡がることが期待されています。
場合によっては、発酵だけでなく、食料そのもの生産やエネルギーの生産もできるようになるかもしれません。
現在の農業技術で、どこまで、食料を確保できるか、エネルギーがいつまで確保できるかわかりませんが、いざという時のためや宇宙での生活には、欠かせない技術になってくるかもしれません。