エイジレスの212回 深い愛情の背後にある神経回路
ヒトの場合、赤ちゃんを育てるためのモチベーションを保つため、出産時に、大量の愛情ホルモン(オキシトシン)が放出されます。
このため、あまり子供好きではなかった方も、出産と同時に、わが子が可愛くてたまらなくなるとのことです。
父親の場合は、出産しないので、母親ほどのオキシトシンは放出されませんが、それでも、普段よりは多めのオキシトシンが放出するため、我が子が可愛く見えてくるようです。
また、普通の恋愛時においても、脳内報酬系ホルモン(恋愛ホルモン)の放出により、異性を好きになることがわかっています。
ということで、多くの哺乳類が、ホルモンにより、異性や子供に愛情を持つようにコントロールされているのですが、ネズミの中には、最初から脳神経に、愛情回路を持っているものがいるようです。
--------------------------------------------------
成体が一雄一雌関係を形成する時、相手個体の認識と評価にいくつかの注目すべき変化が生じる。
主要な変化の1つは、絆を形成しうる2個体がお互いの脳内報酬系を確実に活性化し始める時に起こるが、そうした活性化から絆が形成される際の正確な神経機構は解明されていない。
今回、Robert Liuたちの研究グループは、プレーリーハタネズミの社会的絆モデルを用いて脳内の皮質線条体回路を調べた。
この回路は、動物が報酬を得るために自らの行動を変化させる能力を制御していることが知られている。
Liuたちは、雄と雌のプレーリーハタネズミを6時間にわたって共同生息させて、その間の雌の皮質線条体回路の活動を記録した。
その結果、皮質線条体の接続性の強さから個体間に絆の形成(1. 交尾行動と 2. 並んで身を寄せ合う行動を通して表される)が生じる速さを予測できることが判明した。
また、Liuたちは、(光を介した)光遺伝学的技術を用いて、交尾のない社会的状況下で皮質線条体回路を周期的に活性化させる実験を行い、その後の雌の選好性(全くなじみのない個体ではなく配偶者を好むこと)に影響を及ぼすことができた。
以上の知見は、皮質線条体の活動が絆形成行動と相関しているだけでなく、絆形成行動を加速させる可能性があることを示唆している。
--------------------------------------------------
ハタネズミさんの場合は、脳内の皮質線条体回路を持っているため、たった6時間の共同生息で、仲良くなることがわかったとのことです。
ヒトの場合も、一目惚れなんてこともありますので、短時間でも仲良くなることもありますが、愛情ホルモンの放出が終わると、恋が冷めるなんてことも、まま、あるようですので、ハタネズミさんとは、メカニズムが違うようです。
相手の浮気に悩んでおられる方は、ハタネズミさんの脳回路を相手に植え付けると、宜しいような感じがしますが、残念ながら、今のところ、実現は難しいようです。
因みに、愛情ホルモンを含む報酬系ホルモンは、食事によっても増やすことができますので、相手の胃袋をつかむような戦略は有効かもしれません。
関連記事をご覧になって、参考にしてください。
<関連記事>
第98回 ハッピーホルモンで、エイジングレス!(オキシトシン編)
第97回 ハッピーホルモンでエイジングレス!(セロトニン編)
第96回 ハッピーホルモンで、エイジングレス!(エンドルフィン編)
第95回 報酬中枢の活性化が免疫機能を高める!「長寿」「若返り」も