エイジレスの204回 皮膚のコラーゲン維持における 亜鉛の役割を解明
亜鉛は、原子番号30の金属元素で、人にとっては、必須元素の一つです。
体重70 kgの人の場合、平均2.3 g含まれると言われています。
推定平均必要量は、8 (6) mg/日、推奨量:9 (7) mg/日、上限量:30 (30) mg/日(カッコ内は女性)です。
生体内における亜鉛は、100種類を超える酵素の活性に関与し、主に酵素の構造形成および維持に必須です。
それらの酵素の生理的役割は、免疫機構の補助、創傷治癒、精子形成、味覚感知、胎発生、小児の成長など多岐にわたります。
また、炭酸脱水酵素が最も重要だと思われるほか、加水分解酵素の活性に関わり、DNA や RNA のリン酸エステルを加水分解によって切断するので細胞分裂に大きく関わります。
女性にとって、気になる働きとしては、体内で生合成しているコラーゲン生成があります。
亜鉛が不足すると、
味覚障害
肌の乾燥やシミ,シワなど
脱毛,薄毛,髪の毛が細くなる
爪の異常
精子欠乏,勃起不全
胎児の成長不全
抗酸化力の低下
免疫力低下
気分がふさぎ込む
など、様々な症状が現れるようです。
今回のお話は、皮膚のコラーゲン維持についてのお話です。
---------------------------------------------------
亜鉛は、生命活動に必要な微量元素の 1 つで、毎日の食事から摂取されています。
生体内における亜鉛は、皮膚・骨・筋肉に多く存在することが知られており、何らかの原因によって生体内の亜鉛量が一定値を下回る「亜鉛欠乏状態」になると、創傷治癒の遅延・味覚の異常・免疫機能の低下など、様々な異常が生じます。
中でも、皮膚症状は亜鉛欠乏によって現れやすい症状の一つと考えられており、亜鉛が皮膚の維持に重要な役割を果たしていると考えられています。
しかし、これまで皮膚を形成する細胞での亜鉛の働きは十分に解明されていませんでした。
共同研究グループは、皮膚における生理機能が不明であった亜鉛の輸送体(亜鉛トランスポーター)「ZIP7」に注目し、その役割についてマウスと培養細胞を用いた検討から解明に挑みました。
その結果、ZIP7が欠損するとコラーゲンを産生する線維芽細胞が減少し、皮膚が著しく薄くなることが分かりました。
さらに詳細に調べると、ZIP7の欠損によって線維芽細胞のもとになる間葉系幹細胞の小胞体に亜鉛が蓄積し、小胞体内にあるタンパク質の形作りに関わるプロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)が不活化されて、小胞体ストレスが過剰に亢進することによる細胞死が誘導されることが分かりました。
今回の成果は、亜鉛トランスポーターZIP7 が皮膚のコラーゲン維持に必要であることを示しています。
今後、ZIP7 の機能を詳細に調べることで、加齢による皮膚の変化や皮膚がん・アトピー性皮膚炎といった皮膚に関連する病気において、ZIP7 が有用な治療ターゲットとなることが期待されます。
---------------------------------------------------
ということで、ZIP7というのが少なくなると、体内で、コラーゲンを作り出している線維芽細胞が減って、コラーゲン不足になるということのようです。
コラーゲン生成には、亜鉛が必要なのですが、コラーゲン工場に亜鉛を運ぶトラック(ZIP7)が故障したみたいなことです。
ということで、海産物も赤身肉もきちんと食べているのに、肌の調子がおかしい方は、ZIP7を疑ってみると良いかもしれません。
但し、今回の論文には、ZIP7の活性化方法は記載されていません。
また、改めて、ブログにしたいと思いますが、生合成には、代謝を上げることが重要ですので、関連記事をご覧ください。
<関連記事>
第45回 代謝って何?実は知らない代謝の話とエイジングケアの関係