エイジレスの199回 実験室で、造血幹細胞ができました~

 

 

 一般の方は、多分、聞いても良く分からないとは思いますが、白血病患者の方にとっては、とっても朗報です。

 

 白血病は、異常な血液細胞が、どんどん増殖して、血液本来の仕事を邪魔して、様々な症状を起こさせる病気なので、治療法では、異常な血液細胞(白血病細胞)を消滅させ、正常な血液細胞を再度生産できる状態にすることが目的となります。

 

 現在行われている治療法は、

 

 1.化学療法
 2.造血幹細胞移植
 3.放射線療法

 

があります。

 

で、現状は、血液バンクに登録されている人の造血幹細胞のうち、同じ型を持った方から、移植する方法が一般的なようです。

 

 だた、この方法は、患者さんと同じ型の造血幹細胞を探すことが難しい上に、やはり、他人の細胞なので、拒絶反応などもあるようです。

 

 今回のお話は、2番目の治療法に近いのですが、移植する造血幹細胞が、自分の造血幹細胞であるところが画期的です。

 

では、論文をどうぞ(難しいので、適当に)

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 血液細胞は造血幹細胞から作られているが、造血幹細胞は、胚発生の過程において血管の内壁を覆う特殊な内皮細胞から発生する。

 

 George Daleyたちの研究グループは、ヒトの多能性幹細胞に化学シグナルを用いて造血能を持つ血管内皮細胞に転換した上で、7種類の重要な転写因子の発現を改変して、造血幹細胞に似た細胞に転換させた。

 

 一方、Shahin Rafiiたちの研究グループは、成体マウスの内皮細胞を出発材料とし、重要な転写因子の発現を改変して、マウスの造血幹細胞の特性を備えた細胞に転換させた。

 

 その次の段階として、いずれの研究グループも環境シグナルを用いて造血幹細胞を成熟させた。

 

 Daleyたちは、成体マウスの骨髄にヒトの細胞を移植し、Rafiiたちは、層状になったマウス胎仔の内皮細胞上でマウスの細胞を培養した。

 

 その結果得られた細胞は、造血幹細胞の全ての特徴を備えており、この細胞は移植レシピエントの体内で生着し、複数の血液細胞系統が発生した。

 

 Rafiiたちの研究は、マウスの細胞を対象としたものだが、ヒトの場合には成人の内皮細胞を健康なドナーから容易に得ることができ、Daleyたちは、ドナーから得た細胞を用いて、再プログラム化により多能性を獲得させた。

 

 今回の研究成果については、患者自身の細胞に由来する造血幹細胞を用いて白血病を治療する個別化治療への応用が期待される。

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 今回もマウスでの実験ですが、ヒトの造血幹細胞での増殖実験も行っていて、かなり実現性が高そうです。

 

 つまり、患者さん自身の造血幹細胞を使って、再プログラム化した細胞を患者さんに戻すため、同じ型を探す手間もなくなり、副作用の心配も少ないという画期的な治療法です。

 

 近いうちに臨床研究も行われるようですが、残念ながら、日本での話ではないので、日本で、認可されるまでには、時間がかかりそうです。

 

 とはいえ、同じ型が見つからずに、未だに苦しまれている方にとっては、朗報ですので、新しい治療法が使える日まで、既存の治療法で頑張って頂きたいものです。