170回 1滴の血液からクローンマウスが誕生
体細胞核移植クローン技術は、同じ遺伝子を持ったコピーを無限に生産でき、畜産分野、創薬、絶滅の危機にある「種」の保存などへの応用が期待されています。
核を除いた卵子に体細胞(ドナー細胞)を移植すると、ドナー細胞と同じ遺伝情報を持つ個体を作り出せます。
哺乳類では、ヒツジ、マウス、ウシなど多くの例がありますが、なかでも「ヒツジのドリー」が有名ですね。
マウスでは、これまでに10種類以上のドナー細胞からクローンを作り出せることが報告されてきました。
しかし、従来法ではドナー細胞を臓器から外科的手術によって採取するために、個体を犠牲にせざるをえませんでした。
そこで、今回、試みられたのが、血液から、クローンを作り出す取り組みです。
-------------------------------------------------
マウスの尾部から採取した1滴の血液内にある非リンパ球の白血球を分離、これをドナー細胞として体細胞クローンマウスを作出することに成功しました。
尾部から血液を採取するため、従来法では困難だった生きたまま、かつマウスに負担をかけさせることなくドナー細胞を得ることができます。
白血球には非リンパ球のものとリンパ球のものがあり、リンパ球のDNAは再構成されているためクローン技術には適していません。
ドナー細胞には非リンパ球の細胞だけを利用する必要があります。そこで判別法を検討したところ、直径8 μm(マイクロメートル)以上の細胞を顕微鏡下で選ぶことで、約85%の正確さで非リンパ球が得られることが分かりました。
体細胞核移植クローン技術はさまざまな分野での応用が期待されています。
今回の成果により、特にマウスを用いる医学生物学の分野では、不妊マウスや系統最後のマウスから系統を復活し、維持できる可能性を高められると期待できます。
-------------------------------------------------
これまでは、クローンを生み出すために、母体を殺してしまう必要があったため、倫理的にも、実用的にも、問題があったわけですが、血液1滴で良いという事になると、一気に、定期用範囲が広がる可能性が高くなりました。
生命を作り出すのは、神様の領域と考える方も少なくありませんが、今のところ、ルールに従って行われているようですので、大目に見て頂ければと思います。
さすがに、ヒトのクローンを作る研究者はいないようですが、やがて、不妊治療などへの応用があるかもしれません。
なかなか、線引きが難しい世の中になってまいりました。