168回 宇宙に行くと寿命が延びる

 

 

 アインシュタインの相対性理論によれば、光速に近づくほど、相対的な時間にずれが出て、時間の進み方が遅くなるため、あたかも、人が長生きしたかのようなことになるとのことです。

 

 また、龍宮城に行った浦島太郎は、3年居ただけで700年経っていたとか、数日居ただけで、300年経ったとか言われています。

 

 いづれの場合も、地球時間にすれば、長生きしたという事になりますが、当事者にとっては、寿命には影響がありません。

 

 浦島太郎に至っては、玉手箱を開けたために、むしろ、人としての寿命は、短くなってしまいました。

 

 実は、浦島太郎さんのお話には、いくつか種類があるようでして、童話版だけでなく、

 

1、亀でなく、いきなり乙姫が現れる『万葉集』版
 

2、玉手箱を開けると、老人でなく鶴になる(トゥルーエンド)

  『御伽草子』版
 

3、浦島のその後を描いた神奈川民話版

 

などがあります。

 

 前置きが長くなりましたが、今回、ご紹介する論文は、実際に、線虫を宇宙空間まで、持って行って、地上で暮らしていた線虫と比べてみたというものです。

 

では、論文をどうぞ

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 動物の寿命と老化速度は、気温、酸素、食物摂取などの環境要因の影響を受けている。

 

 一方、宇宙の微小重力環境が老化に及ぼす影響については解明が遅れており、その評価は難しい。

 

 今回、東京都健康長寿医療センター研究所の本田陽子たちは、この問題を解決するため、宇宙飛行をした線虫の老化マーカーを調べて、宇宙環境で発現が変化する遺伝子が寿命の調節にどのようにかかわっているのかを探った。

 国際宇宙実験線虫プロジェクトにおいて、線虫の培養が行われ、線虫は、2日間宇宙飛行し、国際スペースステーションで9日間滞在した。

 

 その後、線虫は液体窒素で急速冷凍されて地球に持ち帰られた。

 

 それと同時に、地上では、対照群の線虫について同じ実験が行われた。

 

 地上での実験では、宇宙で発現低下した7種類の遺伝子のそれぞれを不活化させた線虫の寿命が延びた

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 この研究成果を以って、単純に、寿命が伸びるという話ではありませんが、寿命に係わる遺伝子に影響を与えるたんぱく質も解明されており、ひょっとすると、将来、ヒトへの応用もありえるかもしれません。

 

 宇宙エレベータみたいな壮大な計画もあるようですし、寿命を延ばすために、しばらく、宇宙に滞在するなんて時代がくるかもしれません。