165回 トリプルネガティブ型乳がんの治療標的

 

 

 わたしも知らなかったのですが、乳がんにも、恐ろしい名前の付いた乳がんがあるようでして、その名も「トリプルネガティブ型乳がん」です。

 

 ホルモン療法も、分子標的治療薬のトラスツズマブも効果がなく、現在使用可能な薬剤で、効果が期待できる薬剤は、抗がん剤のみという たちの悪い乳がんらしいです。

 

 乳がん全体の約10%を占め、増殖能力の高いものが多く、さらに治療薬が限られていることから、予後不良といわれているとのこと。

 

 今回、ご紹介する論文は、そんな悪質な乳がんになってしまった方々に朗報となる話かもしれません。

 

では、論文をどうぞ

(内容が難しいので、ポイントだけ記載しています。)

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研究成果のポイント


1. 乳がんの発生や転移に関わる新たな仕組みとして、乳がんで高く発現する転写因子(注1)MAFK とその標的遺伝子として GPNMB を同定しました。


. MAFK と GPNMB は従来のがん遺伝子やがん抑制遺伝子とは異なった仕組みで乳がんの腫瘍形成や転移形成に関与することを明らかにしました。


. 乳がん、それも特に悪性度の高いトリプルネガティブ型(注2)
乳がんの治療や診断法の開発につながることが期待されます。

 

 

注1) 転写因子
遺伝子の発現を調節しているタンパク質の総称

 

注2) トリプルネガティブ型乳がん
乳がんはホルモン受容体であるエストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、そして増殖因子受容体であるHER2 の発現の有無によってサブタイプ分類がなされる。

 

 トリプルネガティブ型乳がんとは、サブタイプ分類により、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2の発現が全て陰性である乳がんを指す。

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 さらに、発現の高い乳がん細胞において、MAFKやGPNMBの発現を低く抑えると、腫瘍形成や転移が抑制されることを証明しましたとのことです。

 

 ということで、MAFKやGPNMBが抑えられる薬を開発すれば、トリプルネガティブ型乳がんにも効果的な薬になる可能性があるとのことです。

 

 別の研究では、マウスを使った研究の行われているようですので、薬の開発も近いのではないかと思います。

 

 ただ、日本では、実際に使えるようになるには、とっても時間が掛かる傾向にありますので、それまで、既存の治療方法で頑張るしかないかもしれません。

 

お大事に