153回 電源の要らないポンプ・・ミミズポンプ

 

 

 聞いただけでは、何なのかよくわからないことが多いのが、科学の世界ですが、今回もそんなお話の一つです。

 

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 クリーンテクノロジーの開発目標の一つに、外部からの電力供給に依存せず、材料自体も全て自然に還元される機械の構築が挙げられます。

 

 栄養や酸素という化学エネルギーのみで機能を発現でき材料は自然に還元されるという点で、生物を材料とする機械は一つの理想形といえます。

 

 共同研究チームは、生体組織の中でも制御性・応答速度・収縮力に優れたミミズの体壁筋に着目しました。

 

 まず、ミミズ筋肉シートの電気刺激に対する収縮力を測定したところ、最大9.3 ミリニュートン(mN)(約0.95 g重)、収縮するまでの応答時間は約0.3秒でした。

 

 これは一般の小型ポンプの素子と同程度の数値であり、ポンプの駆動素子として十分な力が得られることが分かりました。

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ということで、ミミズの筋肉で、ポンプを作ったとのことです。

 

 

で、何が良いかというと、電源が要りません。

 

 正確に言うと、ヒトなどの生物と同じエネルギー源であるATPという物質がいるだけです。

 

 ヒトの場合、糖と酸素から、ATPを作り出しているので、その代わりになるものを用意すれば良いということです。

 

 電力不要の超小型ポンプができれば、電気使用に向かない下水管内のロボットや血管内ロボットなど、工業・医療などさまざまな分野での応用が期待できます。

 

 体内の場合、既にエネルギー源(ATP)は、たくさん用意されていますので、ちょいと拝借するだけで、使えるようになります。

 

 血液や体液の流れが悪くて、病気になっている方は、埋め込むだけで、循環が良くなるようになるかもしれません。

 

 しかも、副作用はないので、理想の機械です。

 

 実用化は、かなり先になるかと思いますが、ヒトが長生きするための道具が、また一つ出来ようとしています。