エイジレスの152回 インフルエンザの季節は過ぎましたが・・ウイルスワクチンの新戦術
今年の冬は、インフルエンザが流行しましたので、感染された方も多かったのではないかと思います。
インフルエンザウイルスの厄介なところは、毎年、流行するウイルスの種類が違うため、流行期を迎えるはるか前に、次の流行するウイルスの型を予測して、ワクチンを製造しなければならないことです。
このため、予測が外れたり、当たっても、ウイルスが微妙に変化して、効果が低かったりすることです。
また、鳥インフルエンザなど病原性の高いウイルスが、変異を繰り返して、ヒトに感染できるようになると、多くのヒトが死亡すると危惧されています。
これまでは、インフルエンザに対して、親和性が高い(効果の高い)TFH細胞を活性化することが、効果の高いワクチンの開発につながると考えられていました。
確かに、効果は高いのですが、予測が外れたり、新種の鳥インフルエンザなどには、対応できませんでした。
そこで、考え出されたのが、ウイルスに対するワクチンの新戦術です。
論文をどうぞ
(難しいので、読み飛ばしてもいいです)
----------------------------------------------
今回、理研を中心とする共同研究グループは、胚中心やTFH細胞を持たないマウスに季節性インフルエンザウイルスや高病原性鳥インフルエンザウイルスのワクチンを接種すると、「免疫グロブリンG2抗体(IgG2抗体)」が誘導されることを発見しました。
IgG2抗体はインフルエンザウイルスに対して低親和性ですが、感染を阻止する作用(中和活性)が高いため十分な予防効果が期待できます。
また、IgG2抗体はTFH細胞に代わって、情報伝達物質のインター-フェロンガンマ(INF-γ)とインターロイキン21(IL-21)を産生する「Ⅰ型ヘルパーT細胞(TH1細胞)」によって誘導されることも分かりました。
すなわち従来の考え方とは異なり、TH1細胞を活性化することで、低親和性にも関わらず中和活性の高い抗体の産生が可能であることが明らかになりました。
本成果により、毎年のように新しく出現するインフルエンザウイルスに対抗するための新しいワクチン戦術として、TH1細胞を効率よく活性化できるワクチンの開発が有効だと考えられます。
----------------------------------------------
つまり、これまでは、特定のウイルスごとに専用ワクチンしか作れなかったのですが、これからは、「どんなウイルスにでも対応できるワクチンを作れるようになった」ということです。
で、そのキーワードが、「IgG2抗体」で、この抗体を身体の中で作るのが、TH1細胞という細胞なので、こいつを活性化させるワクチンを作れば、万能だぜ~という事です。
論文が発表されたのは、2016年11月なので、2017年の冬には間に合いませんが、一番恐ろしい新型の鳥インフルエンザウイルスが爆発的感染(パンデミック)する前に、実用化されることを願うばかりです。(数千万人が死亡する恐れもあるとか・・)
中国には、世界中の1/5の鳥さんが集中しています。
渡航の際は、「見ない、近づかない、触らない」が宜しいかと思います。