138回 肺の細胞が自ら歩いて集まるらしいです。

 

 

 一般の方が、読んだからといって、特に役に立つ話題ではないのですが、その筋の方々にとっては、凄い話らしいです。

 

 そもそも、身体の中で、細胞が動き回っているというのも面白いので、取り上げてみました。

 

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 私たちが吸い込んだ空気(吸気)は気管と気管支を通って肺胞に到達します。

 

 肺胞では血中の酸素と二酸化炭素のガス交換が行われますが、気管と気管支はたくさんの分岐によって吸気を分散することで、より広範囲の肺胞に吸気を送りガス交換の効率を上げています。

 

 加えて、気管と気管支は呼気に混ざった異物を体外に排出する浄化装置としても機能しています。

 

 NE細胞(神経内分泌細胞)は気管と気管支の上皮細胞の1種で、酸素濃度のセンサーや幹細胞ニッチとしての機能が知られていました。

 

 肺がんの1種である小細胞肺がんの起源になるなど、疾患との関連も指摘されています。

 

 NE細胞の分布はユニークで、気管支の分岐点付近に小さなクラスターを作って、いつも規則正しく配置されています。

 

 しかしこのNE細胞の分布については40年近く前に報告されて以来、分布パターンが形成されるメカニズムは解明されていませんでした。

 

 

 NE細胞の挙動を解析した結果、限定的に細胞分化し、その後、自ら歩いて移動し、気管支の分岐点に規則正しく配置されクラスターを形成する一連の過程が明らかになりました。

 

 NE細胞を起源とする小細胞肺がん細胞は転移能が高いことが知られているため、「NE細胞が自ら歩いて移動する」という今回の知見は、細胞の生物学的性質と病理的な現象を結ぶ上で重要と考えられます。

 

 将来、細胞移動の分子メカニズムが解明され、小細胞肺がんとの関係について理解が進むことで、新しい治療薬の開発へつながると期待できます。

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 つまり、NE細胞は、呼吸を助けるために、肺の中の決められた定位置まで、自ら歩いて、お仕事をしているということで、今回、その撮影に成功して、証拠がそろったということです。

 

 で、何の役に立つかというと、ガンの転移にも関係しているので、がん細胞が転移するメカニズムがわかるかも・・ということです。

 

 メカニズムがわかれば、お薬も作りやすいということです。

 

 今回は、小細胞肺がんの話でしたので、肺がんの方には、希望の持てるお話ではありますが、他にも、同じように、動き回って、ガン細胞をばらまいている細胞があるかもしれないので、そのきっかけを見出した研究としては、凄い発見だと思います。

 

 但し、実用化までは、長い日々が必要となりますので、くれぐれも、ガンにはお気を付けください。