134回 円形脱毛症の研究状況
世のお父さん方で、脱毛に悩んでおられる方は、少なくないと思いますが、一般的に男性型脱毛症と円形脱毛症は、原因が違うため区別される事が多いようです。
現在、円形脱毛症の治療は、ステロイドなどを使った対症療法で、多くは改善しているようです。
が、やっぱり、根本的な治療方法の確立が必要だと考えておられる方が、日夜、研究に励んでおられます。
最近の科学雑誌「Nature」の記事です。
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円形脱毛症は自己免疫疾患の1つで、一過性の非瘢痕性脱毛と毛包の維持を特徴としている。
脱毛には輪郭が明瞭な斑状の脱毛をはじめ、びまん性脱毛や全脱毛などの多くの種類が存在し、どの有毛部位にも発生する可能性がある。
最もよく見られる型は頭皮にできる斑状の円形脱毛である。一般集団の約2%が一生のうちに円形脱毛症を発症する。
成長期(毛髪の成長期)の毛球または毛包下部とその周辺へのリンパ球の浸潤が脱毛部の皮膚生検で認められる。
円形脱毛症の主因は毛包での免疫特権の崩壊と考えられている。
円形脱毛症が、複雑な多遺伝子性疾患であること、がヒトやマウスモデルの遺伝学的研究から明らかにされている。
毛包の周期と成長に重要なシグナル伝達経路と関連するいくつかの遺伝学的感受性遺伝子座も同定されている。
通常、円形脱毛症の診断は臨床症状に基づいて行われるが、ダーモスコピーや組織病理学が有用な場合がある。
円形脱毛症を医学的に管理することは難しいが、分子機構の理解の進歩に伴い、近い将来に新しい治療法が開発されて寛解する可能性があることが明らかにされている。
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ちょっと言葉が難しいので、言葉の説明です。
・免疫特権
免疫応答や炎症反応などが起こりにくい性質のこと。
脳,眼(角膜),毛髪,精巣,母親の子宮内の胎児などに免疫特権があると考えられている。
(※脱毛は、毛髪に関する部分の免疫特権がなくなって、自身の免疫システムによって、攻撃されるためらしいです。原因は、ストレスやアレルギーなどとのことです。)
・ダーモスコピー
ダーモスコピー検査とは、ほくろなどの病変部に超音波検査用のジェルを塗布してから、 ダーモスコープ 外部リンク という特殊な拡大鏡を皮膚面に当て、皮膚に分布する メラニンという色素や毛細血管の状態を調べる検査です。
脱毛の検査の場合は、毛髪にゲルがついてべたべたにならないようにゲルを用いないタイプのダーモスコープが使われます。
・組織病理学
病気の原因を探って、その本態を明らかにし、さらに病気によって現れる生体の病的変化を研究する学問で、病気をおこすべき生体の内外諸種の原因(理学的、化学的、生物学的病因、病的素因、遺伝、奇形など)や、細胞、臓器の病的機能を研究する学問です。
病死体の解剖および臓器の顕微鏡的検査を行って、病変の発生、経過、転機などを研究する病理形態学がその中核になります。
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ということで、脱毛という現象に、明確な答えがでているわけではないようですが、近い将来に明らかにされるということです。
上図の左側が正常な毛包で、右側が脱毛症の時のようすです。
難しい話は、置いといて、明らかに、悪さをしている物質があるので、これを防げば、毛包自体が死んでいるわけではないので、根本的な治療ができるというお話です。
対症療法で改善される方は、しばらく続けて頂いて、やがて明らかにされる根本的な治療方法が出てくるのをお待ちください。
お大事に