114回 DNA折り紙を使って数学問題の解を表示するDNA計算機
科学の世界では、一般の人が聞いても見てもわからないようなマニアックな技術が人知れず(論文は発表されてはいますが・・)、開発されています。
今回は、そんな感じのお話です。(ごめんなさい。ちょっと、難しいです。)
DNA基礎編
1.「DNA」は、遺伝情報を記録している物質です。Deoxyribo Nucleic Acidの頭文字。日本語に訳すとデオキシリボ核酸
2.「染色体」とは、DNAとヒストンからなる物質です。長いDNAは、丸っこいヒストンという物質に巻き付いて細胞の中に収まっています
3.「遺伝子」はDNA上の、タンパク質の作り方を記録している場所のことです。DNA全体の1.5%程度しかありません
4.「ゲノム」とは生物にとって必要なワンセットの遺伝情報(全遺伝情報)で、物質ではありません
「DNA折り紙とは?」
DNA分子は皆さんもご存じかもしれませんが、決まった相手とだけ二重らせんを組む性質があります。
この現象を応用して、ナノ構造体を作ろうとする研究は、Nadrian C. Seemanという研究者によって開拓されました。
初期に作られたもっとも有名な一つが、Seemanの立方体と呼ばれる構造体です。
最近では、下図のような複雑な形の構造物も作れるようになってきました。
さらに、現在研究中のテーマに「DNA計算機」というのがあります。
DNA計算機とは?
1年ほど前の論文記事です。
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DNA鎖にコードされた2つの数値を入力すると、その積が画面上に数字で表示されるというDNAを用いた計算機について記述した論文が、今週掲載される。
生物システムは膨大な量の情報を生成するが、そうした情報を柔軟に解析する方法が必要とされている。
DNAを使って数値を入力し、有用な解を速やかに生成する方法は、そうした膨大なデータを解読する1つの方法だ。
DNAの塩基配列は、遺伝情報以外の情報もコードでき、数千個のDNA分子の同時相互作用により複数の計算を一度に行うことができる。
DNAを用いた計算システムの最新版は、電子計算機の模倣(演算を実装するいわゆる「論理ゲート」の設計)によって機能する。
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つまり、DNAに刺激(数値)を与えると、コンピュータに似た感じで、計算をしてくれるというものです。
いかも、DNAは数が非常に多いので、同時に圧倒的にたくさんの計算ができる可能性があるということです。
で、何の役に立つかというと、生体センシング(生体情報を測定する)システムへの応用とのことです。
既に、、スマホなどにも搭載されていますが、IT技術を使って、心拍数、血圧、歩数、運動量、睡眠時間など、人が意識しなくても、普通に生活しているだけで、人の健康状態を測定・記録して、健康チェックや病気の早期発見などにつなげようとする技術です。
DNA計算機は、そもそも、ほとんど電気がいらないうえに、圧倒的に計算力があるので、人が普通に生活している間に、DNA計算機が、病気の診断をして、簡単な早期治療をまで自動的に行うことができるかもしれないということです。
脳血管障害障害など、症状が出たときには、重大な結果をもたらす病気なんかも、「そろそろ危ないですよ~」とか、「血栓ができそうだから、血栓を溶かす食事にしましょう」なんて言ってくれるようになるかもしれません。
長生きして、良いことがあるとは限りませんが、それでも、長生きしたいと思われている方は、実用化され次第、採用されては如何でしょうか。
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