113回 肥満を促進するペプチド「ニューロテンシン」
日々、ダイエットに励んでおられる皆様、今回は、そんな努力を嘲笑う物質のご紹介です。
何万年、何十万年という人類の歴史の中で、食料に困らなくなってきたのは、つい最近の話でして、そのため、人の遺伝子には、体内に入ってきた栄養素を効率的に吸収する仕組みが組み込まれています。
つまり、ダイエットとは、遺伝子との戦いということです。
この戦いに勝った方のみが、若さと美しさと健康を手に入れることができるということです。
で、昨年、発表された論文によれば、ダイエットの新しい敵は、「ニューロテンシン」(新しい天津飯ではありません)とのことです。
ニューロテンシン(分子量~1700)とは、アミノ酸が13個くっついたペプチドという物質の仲間で、タンパク質よりは小さい物質です。
神経伝達物質あるいは神経調節物質として様々な生理機能の調節に関与しているようでして、痛みを脳に伝える働きをしています。
体に障害(傷や病気など)があっても、痛くないと、何も気にしないため、かえって症状を悪化させますので、痛みを脳に伝えるのは、非常に大事な生体防御反応でもあります。
そういう意味においては、ニューロテンシンは、ある意味、命に係わるほどの重要な物質という事になります。
が、今回判明した新たな機能とは、
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今回、Mark Eversたちは、高脂肪の食餌を与えられたNT欠損マウスが野生型の同腹仔より脂肪の吸収が少なく、脂肪の大量摂取に関連する他の状態(例えば、インスリン抵抗性の亢進)になりにくいことを明らかにし、マウスとショウジョウバエの場合には代謝を調節する非常に重要な酵素(AMPK)の活性がNTによって阻害されることも明らかにした。
この経路は、進化の過程を通じて保存され、摂取された脂肪が必ず効率的に吸収されるようにしている可能性がある、とEversたちは考えている。また縦断的研究における4,632人の成人の解析では、プロNT濃度がボディマス指数と胴囲と有意に関連していることも明らかになった。
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つまり、ニューロテンシン(NT)は、脂肪の吸収について、それを阻止しようとしている酵素の働きを邪魔して、脂肪を必ず吸収するように、指令を出している可能性があるとのことです。
で、ニューロテンシン(NT)の前駆体(NTになる前の物質)を、体内にたくさん持っている子供は、将来肥満になる可能性が、2倍になるとのことです。
肥満の原因となるニューロテンシンを減らせば、ダイエットに繋がる可能性があるわけですが、今回の報告では、そのことには、触れていません。
但し、1973年に発見されたニューロテンシンは、むしろ食欲を抑える働きが報告されていますので、増やすべきか、減らすべきか、非常に悩ましいところですので、暫くは、様子見しかなさそうです。
ということで、どうしてもダイエットしたいという方のために、豆知識を一つ伝授いたします。
レプチンという食欲を抑えるホルモンがあります。
普段は、人の脂肪細胞の中に隠れています。
こいつを増やすと、食欲が抑えられて、結果的に、ダイエットになります。
高たんぱく食で増えるらしいので、炭水化物の代わりに、鶏肉、魚、豆腐などを食べて頑張ってみてください。
運が良ければ、ダイエットできるかもしれません・・・