15日午前8時ごろ、広島県大竹市の阿多田島沖の瀬戸内海で、自衛艦「おおすみ」(基準排水量8900トン)と小型船「とびうお」(高森昶〈きよし〉船長)が衝突し、乗っていた男性4人全員が投げ出された. うち2人が一時心肺停止の状態となり山口県岩国市内の病院に搬送され、意識不明の状態が続いている. 第6管区海上保安本部によると、救助された男性が「自衛艦の左舷船体中央に衝突した」と証言しているという. 6管の巡視艇もおおすみの左舷船体に衝突の跡らしきものを確認した. 政府は同日、危機管理センターに官邸対策室を設置した. 6管などによると、「とびうお」に乗っていたのは船長の高森さん(67)=広島市中区吉島西=、大竹宏治さん(66)=同区大手町=、寺岡章二さん(67)=同区吉島西=、伏田則人さん(67)=同区舟入中町=の4人. 大竹さんと高森さんが一時心肺停止状態だった. 残る2人の命に別条はない. 広島県港湾振興課などによると、とびうおは全長7・6メートル、幅2・27メートル. 広島市内から阿多田島の南にある広島・山口県境の甲島(かぶとじま)付近で釣りをするため出航したという. 6管によると、おおすみから「接近した際に船が転覆した」と無線で通報があった. おおすみ側は「接触を確認していない」と説明しているという. 小型船が転覆した場所は、阿多田島の北東約1・4キロ沖の海上. 当時、現場海域は晴れていて、北東の風約5メートル. 波は立っていなかったという. 防衛省によると、おおすみは定期修理のために海上自衛隊呉基地(広島県呉市)から三井造船玉野事業所(岡山県玉野市)に向かう途中だった. おおすみは海に投げ出された4人の救助にあたった. 事故を受け、国の運輸安全委員会は船舶事故調査官4人を派遣した. 海上保安庁によると、業務上過失傷害や過失往来危険の疑いもあるとみて、広島海上保安部が両船の乗組員らに当時の状況を聴いている. 防衛省によると、「おおすみ」は1998年3月に就役. 海上自衛隊呉基地に所属している. 全長は178メートル、乗員約135人で、艦長は田中久行・2等海佐(51)が務めている. 独立行政法人国立病院機構岩国医療センターによると、午前9時半ごろ、救急車で男性2人が搬送され、ともに現在措置中という. 阿多田島漁協の湊修(みなとおさむ)参事によると、午前8時ごろに警笛が鳴り、職員が双眼鏡で見たところ、小さな船がひっくり返っていたという. そばに海上自衛隊の船があったという. ◇ 〈おおすみ〉 海上自衛隊が3隻配備している輸送艦「おおすみ型」の1番艦で、1998年3月に就役. 海自呉基地に所属している. 建造費は約500億円. 全長は178メートル、乗員約135人で、基準排水量8900トン. ヘリコプターの発着甲板を備えており、大型ホーバークラフト(LCAC)2隻や戦車10両を搭載できる. 東日本大震災や、昨年の台風30号で被災したフィリピンで、物資輸送などの救援活動も担った. 清水謙司】台風30号で多数の死者が出ているフィリピンで救援活動をするため、広島県呉市の海上自衛隊呉基地から17日、補給艦「とわだ」(基準排水量8100トン、約140人乗り組み)が出港した. 18日には大型護衛艦「いせ」、輸送艦「おおすみ」も出港予定で、3隻とも22日ごろ現地に着く見通しだ. トピックス「フィリピン台風被害」 政府は、国際緊急救助活動としては過去最大規模となる自衛隊員約1180人の派遣を決めている. 現地で捜索や救助、防疫や救援物資の輸送などにあたる.