『車椅子のままで良いからパチンコに行きたい』
入院中の老紳士の言葉。
若いころから綺麗好きで、外出する際には近所でもお洒落をする。
『オレが入院している事はまわりに言うな』
見舞に訪れ、変化して行く自分を見られるのは嫌だったからだ。
もちろんパチンコには行かなくなった。
パチンコにはドラマがあった。
行きつけの店はパチンコ甲信越(仮称)
近所に新店が出来ても、当初は覗くが店を変える事は無かった。
『あっちに出来た店は、なんか温かみがないというか。。。なんだろうなぁ』
大勝した記憶。そのお金で、ちょっと豪華な食事をした記憶。
大負けした記憶。当時は悔しくて仕方なかったが、愛する機種だから今では良い思い出。
顔見知りが増え、好調な人がコーヒーを配って回る。
近所の若者との接点にもなっていた。来年の就職どうすんだ?なんて相談に乗る事もあった。
カミさんと喧嘩した時も、ホールに行って頭を冷やす。
次の日は二人仲良くパチンコだ。連チャンしないなと思えばカミさんに交代。
連チャンしたときは、してやったり。カミさんも嬉しげな顔。
パチンコが原因でケンカした事もある。
夕飯前に『ちょっとパチンコ行ってくるわ』と出掛け、蓮チャンが終わらず。。。
カミさんもパチンカーだから修羅場にはならないが、機嫌はもちろん悪い。
その八つ当たりは、店長へ(笑)駐車場で見かけたら、小言の一つを吐く『出ねぇぞ』と。
思い出が多く、ふとした瞬間にタイムスリップする錯覚に陥る。
ある時、娘が恋人を紹介したいと言ってきた。
会ってビックリ、ホールで良く見かけたスロッタ―だった。
『オマエ、あの店に通ってた坊主だろう』
田舎には良くある事なのかもしれないが、不思議な縁。
その坊主が、後に家族となった。
『車椅子のままで良いからパチンコに行きたい』
この言葉から2か月も経たずに亡くなった。
結論から言うと、パチンコには行けず仕舞いだったとか。



