前項で、「稿を変えて」とお約束したとおり、爆弾は何かについて簡単に。

 

大手書店の人事労務関係コーナーにいくと、大抵、いくつか分厚い賃金表で埋め尽くされたデータ本が並んでいる。公務員や民間の様々な職種、産業、勤務年数などの属性ごとの賃金表である。長らく、どうしてこのような結構な値段の本が、それだけ売れるのかが不思議だった。

 

しかし、私も一度地方支社勤務をして、よくわかった。

地方支社勤務では、取引先の中小零細企業の経営者と交わることが多かった。その中で以下のようなことが実際の皮膚感覚で分かってきた。

 

 

一 般に地方都市では、地方新聞社、電力会社などがリーディングカンパニーであり、県庁職員などと並び、給与水準が一般的に最も高い。地元の中小零細企業で は、給与を決定するにあたり、最低賃金やこれらのリーディングカンパニー、また県庁職員の給与動向を本当によくみて、参考にしている(もちろん賃金水準自 体はかなり違うのが普通だが)。そして、リーディングカンパニーは、県庁職員(や政令年の場合には、その役所の職員)の給与水準を参考にしている。

 

組合などもない、労使交渉で賃金額が決定されないような大部分の中小零細企業では、経営者が、いわゆる世間相場などを参考に初任賃金額も、賃上げ比率も決めているのである。

 

も うここまで書けばお分かりであろう。国家公務員の賃下げは、当然のことながら地方公務員給与にも跳ね返る。それは、地場のリーディングカンパニーの賃金相 場にも影響し、それらが、中小零細企業の賃金にも影響するのは確実だ。すなわち、賃金デフレである。それほどまでに、公務員の給与というのは、影響力があるのだ。

 

このことは、報道によれば、自治労もすでに警鐘を鳴らし続けているようだが、当事者が言ったところで、確かに説得力は小さい。しかし、私は自分の経験から、 本当に恐ろしいことになりそうな気がする。現在の経済の最大の問題はデフレである。それを深化させるような政策をどうして政府が(と言うより民主党か?) 採るのか、信じがたい。

 

「身を切れ」論を掲げる大衆は、自らで自分のクビを絞めているのが分からないのだろうか。