先輩の一言で解放された気がした。
「よかったじゃん」その一言で。
でもその時は、特に目標も無く、憧れる先輩もなく、
今っぽく言えば、なりたい自分なんて想像もつかなかった。
現実は、こんな事をよく言われた。
「目標を立てろ」
「自分がやるって言った事くらいやれっ」
「数字へのこだわりはないのか?」
もう、うんざりだった。
金も無いし、会ってくれる客もいない。
あるのは借金と、暇な時間。
飲食の仕事をしていた時、抵抗もなく遊んでくれた人。
気軽に来店してくれたお客さん。
当時の同僚や、パートやバイトの人。
自分が保険屋になったとたん、会ってくれなくもなった。
自分でそんなもんかって思った。
それでも、心のどこかで、自分が選んだ仕事に
間違いないって思ってた。
24歳の時、バイクの事故で車4台分の距離を飛ばされ
左肩から落下し、左半身をバラバラに砕かれ、左腕が
自分の胸の前にぶらさがっていた姿。
頭から落ちていたら、今はなかったと思う。
その時の保険屋の態度と言動が許せなかった。
少なくても、自分の身の回りの人や知り合いが、
同じ目に合ってしまった時、同じ思いをさせたくない。
自分が絶対に同じ嫌な思いをさせないって決めて、
飛び込んだ保険の世界。
実態は甘くなかった。
先輩の言葉で心は解放された。
けど、営業マンとしての現実はまるで違う現実。
目標もなく、保険屋というだけで距離を置かれる。
いったい保険屋って、そんなに嫌われる仕事なのか?
途方に暮れる時間だけはたっぷりあった。
日々、借りては返しの繰り返し。
精神的にも参ってた。
もう辞めようかとも思った。
借金返すのに、どこで働こうか。
電車に乗れば、広告に目が行く。
もちろん消費者金融の広告に。
暇を持て余し、いつも行く美容室へ髪を切りに行った。
髪を切っている最中に、当時のオーナーからこんな話を聞いた。
「今2店舗あるんの知ってるよね?1店舗閉める事にしたよ」と。
どしたんですか?と尋ねると、
「家賃も高いし、周りに美容室がたくさんできて大変なんだ」
確か、こんな感じの話だった。
金はないけど、暇だった自分は美容室から出て本屋に行った。
いつもいろんな話をしてくれて、本当に人のいい美容師さん。
少しでも協力できる事がないかって、本を買う金はないから
端から立ち読みを始めた。全てお金に関わる本。
そして数日後美容師さんへ電話して、閉店後に行く事にした。
素人の自分が、本に書いてあった事を受け売りし、
見よう見まねで一生懸命説明した。
銀行融資の事、制度融資の事、助成金の事。
残念な事に、自分の本業に繋がる事は一切なし。
ただその人の為に一生懸命話した。
後で聞いたら、自分が話した事は既に知っていたらしい。
あたりまえか・・・。
その美容師さんは、初めて聞いたような感じで聞いてくれた。
そして、思いも寄らぬ答えをくれた。
「美容師は、お金の事とか全然知らないと思うんだよ。
だから今日話してくれた事、きっと役に立つから、
俺の知り合いに話してくれないか?」・・・と。
「日を改めて、いついつの何時にもう1回来てくれる」・・・と。
答えは、もちろん、「はい」、以外ない。
予定していた当日、その場所に行ってみると
友達の美容師さんが5人も来ていた。
自分は緊張のあまり、どこからしゃべっていいか、
どうしゃべろうか、頭の中は真っ白。
それでも、自分を作らず、一生懸命伝えようとしたと思う。
聞いてる方は、分けわかんなかったかもしれない。
一通り話をし、質問を貰っても、立ち読みで得た知識では
回答もできない。
宿題をいくつか貰い、全員と名刺交換をし、それぞれの
人と次回会う約束の日を決めて、その場を後にした。
それが、馬鹿な夢への始まりだった。。。
~~continue~~