
(出所:IMF世界経済見通し2012年10月度より筆者作成: 画像をクリックするとより鮮明なグラフをご覧頂けます)
<中南米は高成長を維持。中間層が大幅増>
資源価格の高騰、中国への輸出拡大などの恩恵により、2000年代、多くの中南米諸国が高成長を遂げた。多くの国で経済のファンダメンタルズは改善し、将来的にも安定した成長が見込まれるようになった。80年代の中南米の債務危機で被害を受けた日本企業も、2001年のゴールドマンサックスの発行したレポートをもとに広まったBRICsを発端にさらなる注目が高まったブラジルをはじめ中南米諸国に再度、熱い視線を向けることとなった。
世界銀行が2012年11月に発行したレポート「中南米の所得階層の流動性と中間層の拡大」(Economic Mobility and the Rise of the Latin American Middle Class )では、過去10年で中南米の中間層は5割増となり、全人口の3割を占めるようになったという。中南米に実際に足を運ぶと明らかであるが、多くの国で未だに植民地時代の面影が残り、白人系や混血(スペイン語でいうメスティーソ。白人と原住民の混血。)が多くの富を占め、貧富の格差が大きい。同地域での、この中間層拡大の実績は大きな成果である。

(出所:Economist 2012年11月10日付「Expanding Middle」)
なお、2012年に世界が減速する中で、多くの国での緩やかな経済成長の背景について、国連ラテンアメリカ•カリブ経済委員会(ECLAC(スペイン語名:CEPAL))は順調な国内消費があるという。ECLACは2012年10月発行のレポート「中南米の経済調査」(Economic Survey of Latin America and the Caribbean 2012)で、この消費拡大の理由に労働市場の拡大、融資拡大、国によっては移民送金なども貢献していると述べている。
<中間層拡大がもたらす光と影>
中間層の拡大は所得増による国内消費の拡大をもたらした。一方で、社会的な要望が増える中間層のニーズを満たさねばならない各国政権にとっては難しい局面を迎えている。今後、これまでのような高成長ではなく、低成長の時代を迎えている中南米各国にとっては頭痛の種である。
中間層拡大は、2012年の中南米経済の成長を支えた。一方で、貧困から脱出し、中間層入りし、豊かな生活を味わった多くの人々は政府に対して益々、社会的なサービスを求め始めている。これまではインフォーマルセクターで働いていた労働者がフォーマルセクターにて雇用されるようになり、税金を払うようになった一方で、彼らからのニーズに応えなければならない。環境問題や医療、教育など各種公共サービスの拡大など各国政府は人々の新たな要望に応じる改革を推進しない場合は、社会的な不安も拡大が予想される。
これまでは経済成長と共に、これの財源も確保できていたが、今後の緩やかな成長あるいは低成長が見込まれる国においては、国の舵取りが難しくなってこよう。さらに、ブラジルやアルゼンチンなどを除くと多くの国がとても低い税率となっており、資源高により財源を維持していた国なども、チリのように資源高の恩恵を国の将来の財源として貯金しておかねば困難に直面するであろう。