私はただ座り込み、現実を受け止めきれずにいた。
怒りよりも先に、深い虚しさがあった。
「あなたが隣にいると思って寝るね。」
その一文を読んだ瞬間、
何かが完全に崩れ落ちた。
始まりは、アメリカ出張中に届いた、5歳の娘からのビデオトークだった。
「ママが携帯ばっかりして遊んでくれない。つまらない。ママまだ寝てるよ、お腹も空いたよ。」
その幼い言葉が、胸の奥を締めつけた。
娘の世界の中心にいるべき母親が、いまどこを見ているのか。
小さな違和感が、やがて確信へと変わっていった。
出張から戻った朝。
娘は満面の笑顔で私に飛びついた。
だが、妻は起きてこない。
その寝顔を見ながら、どこか遠くへ行ってしまったような気がした。
そして、運命のような瞬間が訪れた。
妻が部屋を出たあと、ベッドの上に置かれた携帯が目に入った。
ほんの一瞬、見てはいけないと思いながらも、手が伸びていた。
そこには、知らない男とのメッセージが並んでいた。
「愛してる」「君は僕のすべて」「前世では一緒になれなかったけど、今世こそ結ばれたい」――。
異様な言葉たちが画面いっぱいに続いていた。
不倫相手は、オンライン啓発セミナーで出会った講師。
「あなたは私のツインレイ、魂の片割れ」と囁き、ソウルラブを昇華すれば、現実の世界も向上すると何度も呟き、妻の道徳心を壊し心を奪っていた。
“ツインレイ”――魂の片割れ。
その言葉の異様さと現実の重さに、もう何も言えなかった。
私はただ座り込み、現実を受け止めきれずにいた。
怒りよりも先に、深い虚しさがあった。
「あなたが隣にいると思って寝るね。」
その一文を読んだ瞬間、
何かが完全に崩れ落ちた。
娘が眠ったあと、妻は毎晩のようにその男とZoomで通話していた。
朝の3時、4時まで。
アメリカ出張前夜には「明日から夫がアメリカ出張。いつでも会えるね」と送り、
帰国前夜も、夜明けまで通話を続けていた。
朝の不機嫌、娘への怒鳴り声――
すべての理由が、ようやく繋がった。
私は静かに妻に尋ねた。
「不倫しているよね。」
妻は一瞬も動じずに言った。
「オンライン以外一度も会ってない。肉体関係はない。」 そして
「結婚してても、誰かを好きになるのは止められないでしょ。」
その言葉で、すべてが終わった。
寝室に行くと、妻はその男と通話中だった。
後で聞いたがこれ二人の結婚の話であったと。
彼女から、
「知りたいことがあるなら自分で聞けばいい」と言いながら、携帯を私に差し出した。
私は彼の名前と住所を確認し、電話を切った。
男は「マーケティングのストラテジスト」と名乗る経営コンサルタントだった。彼にも家族がいることもわかった。
私は彼に以下のような内容のメッセージを送った。
「妻と付き合うのはあなた方の自由です。
ただ、小さな娘がいることを考えてほしい。」
返ってきたのは、現実離れした言葉だった。(以下要約です)
「娘を想われる父親の鏡です。(一部省略)
対面で謝罪し、どのようなことだったか私の妻も同席しお話しさせてください。」
また今の奥さんとの離婚の話を始めたこと、妻との結婚について進み始めたことがそこには書かれていた。
その日から、娘は自分の大事なものを私の部屋に持ち込み、私のベッドで寝るようになった。その夜、私は静かに決めた。
娘をこの先も守っていくと。
あの日から、私の人生は静かに変わった。
裏切りの痛みは深く、癒えるにはとても時間がかかるだろう。
けれど、娘の笑顔が私を支えてくれている。
その小さな手を握るたびに、もう二度と、この手を離すまいと誓う。
この手記は、誰かを責めたいわけではない。
ただ、父として、ひとりの人間として、
「真実から逃げずに生きた記録」として残したい。いつか娘が成長した時に、なぜ父はその道を歩むことにしたのか。」
現在妻は洗脳から目が覚めたように変わり、自分のやったことを後悔し謝罪しています。
今、誰かの信頼を裏切っている人がいるなら、どうか思い出してほしい。 あなたが本当に大事にすべき人が誰なのかを。 信頼を失うのは一瞬。取り戻すのは一生かけても難しいことを。