僕にとって人間的な美しさは苦しみからくる葛藤です。それこそ僕にとっての人間観なんです。だから、オチはどうであれ、苦しみを描いていない作品は人間的な美しさを無視した夢物語だと…僕は本気でそう思ってしまいます。
考えても見てほしい。幸福なんてもんはすぐに慣れるものです。だから僕らは傲慢にも幸福の上に更なる幸福を求めようとする。まるで、麻薬中毒者が更なる麻薬を求めるように。でも、苦しみはいくらあっても慣れません。僕らは慣れていると思っていてもどこかでまだ苦しみの味を覚えているものです。どんな動物でも飯を食べれば幸福を感じるでしょう?でも、苦しみに喘ぐことはありません。ですが、僕ら人間は苦しむことが出来ます。それは僕らの特権です。苦しむことで感性が、内に潜む豊かな感性が…僕らの前に現前するのです。
しかし、もっと言うことが許されるのであれば、僕に必要なのは苦しみではありません。必要なのは苦しみからくる豊かな感性…ただそれだけです。
ですから贅沢を言えば苦しみは豊かな感性だけをおいてさっさと僕の劇場から立ち去って欲しいのです。
もちろん、そんな都合よくいくわけないですから、苦しみと豊かな感性を併存させなければなりません。
豊かな感性が苦しみに打ち勝つその日まで。