自分がへんだと思ったことは無い。

当時の自分は自分の世界で正しく生きていた。

病床で、振り返れば、空しい。

 

高校生の頃、叔母が言った言葉が頭に残っている。

「あの子、どこか病気なの?」

仏壇で拝んでいた叔母がこちらを振り向いて、祖母に言った。

 

叔母とはほぼ面識が無い。

30歳を越えた今、記憶も思い出もない。

父の姉で、聞けば叔母が若い頃に祖父に勘当されているらしい、祖父の葬式にも現れなかった。

 

叔母が、数珠揺らしながら、眉をひそめてこちらを見ている。

横で正座しているのは当時30歳過ぎの女性。

肌の色が絶望的に白く、肩は削いだように細い女性だった。

 

当時の自分は、丸坊主だった。

部活が理由、というわけではない。

髪の毛があることが怖かった。

 

髪の毛は不浄なもの。

あれば世の中の汚れを集める。

歩けば、世の中に触る、汚れる、怖い、怖い。

 

自分でバリカンで刈り、カミソリで剃る。

カミソリ負けした皮膚は赤くただれる。

カミソリ用のシェービング剤が顔に垂れ、顔も赤く膨れていた。

 

普通の人が見れば、変だったろう。