ショートコラム 「美の時 倫の刻」 
      (月)期間限定テーマ=2022年春は「西城秀樹」さん
      (火・木・土)連載
 

 第二十三回 ひかる一平「青空オンリー・ユー」をめぐって

2022年4月25日添付の導入動画

 ↓をクリックして下さい。


 一九八一年組の中でも、出色の美少年・ひかる一平さんのデビュー曲。
「腐ったミカン」で第一シリーズの「十五歳の母」を凌ぐほどのインパクトを残した「3年B組 金八先生」の第二シリーズに出演。印象的な生徒の一人として注目を集め、同じ事務所(ジャニーズ事務所)の「たのきんトリオ」の弟分として、ソロデビューしたひかる一平さん。田原俊彦(1980年6月「哀愁でいと」)、近藤真彦(1980年12月)の両氏に続くデビュー。再び日の出の勢いとなった事務所の力が、売り出しに関して有利に働いたのは事実だが、当時盛んだった年末の歌謡賞レースでは「兄貴分」の近藤真彦氏の後塵を拝することになった面もある。
 とはいえ、少女たちを熱狂させた少年アイドルが大量にデビューした八一年組の中でも、顔立ちの美形ぶりはナンバーワンだったのではないかと思う。

 その「美少年・ひかる一平」の「青空オンリー・ユー」は、マッチを脅かすまでには到らなかったが、十分にヒットした曲。当時のヒット・チャート番組にもランクインしていたはずだ。
 ヒットの原動力は、歌い手のキャラクターと一致したウェルメイドなポップ・ソングぶりにあると思う。
「タ~ン、タタン、タッタッタッタ~ン」という定番のリズムに明るいコード展開。若い(少し悪ぶった?)男の子が初心な女の子に恋を打ち明ける、チャーミングで明朗な世界。曲を聴いているだけではちょっと背中がむずがゆくなりそう(自分で「ピュアな気持ち」とか言っちゃいます)。
 だが、これを嫌味なく聴かせるのは、歌い手のキュートさと、歌詞、曲、アレンジの全てが一枚の見事な絵のように「青春ポップ」の情景を描いてみせるからだ。
 製作スタッフは、驚きの豪華版。詞・松本隆、曲・加瀬邦彦、アレンジ・伊藤銀次&大村雅朗という、「ジュリー/元春≒聖子」な組み合わせ。特に、加瀬さんと銀次さんの組み合わせを見ると、あの定番ダンスリズムのイントロが、『G.S. I LOVE YOU』(沢田研二が1980年に発売したアルバム)に直結するイメージとなる。もっとも、ジュリーはシニックさのない爽快ポップはやらないだろうが。
 
 これだけの腕利き達が、ティーンエイジ・アイドルのために作ったポップソング。間違い出来になるわけだ。だから、ひかる一平氏のキャリアの中では大ヒットを記録した(もちろんデビュー曲としてのプロモーションの力もあったはずだが。)
 だから私は、この曲、もっと売れてよかったはずだったと思う。
 そうならなかったのは、メロディー再現性の低い、歌い手の歌唱力に原因があった気がする。
 一平さんの歌がもっと上手かったら、もっと売れたかも…。
 そう思うのだが、あの頼りないボーカルだからこその好感度だった、とも考えられるし…。

 しかし、今聴いても「いいな」と感じる曲であることは変わらない。
 ひかる一平「青空オンリー・ユー」は、もっと評価されるべき曲だと思う。

 ひかる一平 「青空オンリー・ユー」(1981年5月)
    作詞・松本隆
    作曲・加瀬邦彦
    編曲・伊藤銀次、大村雅朗


            藤谷蓮次郎
                二○二二年四月十九日