ショートコラム 「美の時 倫の刻」 
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 第二十回 河合奈保子「スマイル・フォー・ミー」をめぐって

2022年4月20日添付。導入動画。

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 80年代女性アイドルとして重要な存在・河合奈保子さん。
 同時期に松田聖子さん、三原順子さんなど、つよく人目をひく人たちが多かったために、少し地味な位置へ追いやられた感がある。
 が、近年、当時のことを知らない若者たちに、「河合奈保子」という才能豊かな女性アイドルの名前が再発見されていると聞く。
 やっぱり「いい」は何らかの形で再発見されるものなんだなあ…と、嬉しく思う。

 河合奈保子さんがテレビ番組に出たり、ヒットチャートを賑わせたりしていたころ、私にとって彼女は、清楚で明るく、眩しいくらいに可愛らしく綺麗なお姉さん、といった存在。歌声もしっかりしていて、他の女性アイドルと比べて頭一つ抜けだした歌唱力を感じていた。特に、低い音から高い音まで安定して聴き取りやすく、それでいて若い女性らしい可憐さを感じる歌声は、当時の歌番組の中で、爽やかな風が吹いたような時間帯を与えてくれていた。
 やがて、だんだんとマイナーな曲調に移動していったのは、その声質に合わせた選択だったのかもしれない。だが、私は、あの「きれいで清潔なお姉さん」から外れていく彼女には、違和感を感じていた。竹内まりや氏作の「けんかをやめて」(1982年9月)は、河合奈保子と竹内まりやという二人の優れたボーカリストの音域の近さから来ている魅力なのではないかと思う。

 さて、そんな河合奈保子さんから一曲なら、やはりこれでしょう。
 5曲目のシングル「スマイル・フォー・ミー」。
 初めての恋人へのめり込んでいく(たぶん)十代の思いが歌われています。
 キャッチーなAメロ、少しメランコリックなBメロ、「スマイル・フォー・ミー!」と叫ぶ開放感たあっぷりのサビと、展開も完璧。少しの嫌らしさ、暗さもなく、聴いていて快活な気持ちに包まれます。
 屈託ない明るさに満ちたラブリーなポップソング。これを歌ってこれほどはまるのは、やはり河合奈保子さんしかいなかったと思う。

 今聴いても、「時代のヒロインがここにいる」と感じること間違いなし、です。
 
  
 
 河合奈保子 「スマイル・フォー・ミー」(1981年6月)
    作詞・竜真知子
    作曲・馬飼野康二
    編曲・大村雅朗


            藤谷蓮次郎
                二○二二年四月十四日