ショートコラム 「美の時 倫の刻」
(火・木・土)連載
第十五回 忌野清志郎+坂本龍一「い・け・な・いルージュマジック」をめぐって
春です。
色んな理屈は置いておき、この曲でゴキゲンになってみましょう。
特に今の十代、二十代といった若い人たちに聴いて欲しいです。
時は、1982年の春。
何度も何度も「ベイベー、OH、ベイベー!」と繰り返すこの曲が、散り吹雪く桜の花びらを背景に、日本中に流れた。そこには、二人のど派手な男達が抱き合ったり、時にキスしたりして、立っていた。
男達の名は、忌野清志郎と坂本龍一。長いキャリアを経て、それぞれに大人気バンドの一員として、ここ数年で急速に知名度を高めた。
1980年代は、リベンジの時代。1970年代まではなかなか陽が当たらなかった日本ロック界の才能が、次々に大衆に発見されていった。この二人も、そういう流れの中にいたカリスマ。
そんなとびきりの腕利き二人は、「他人なんか気にするな!」とだけ歌っている。
そうじゃないと、「春の日も暗くなっちまう」と。
学校行きたくない十代!
社会に馴染めない若者!
清志郎と教授(坂本さん)の歌に耳を預けなよ。
化粧品会社のコマーシャルソングに「い・け・な・い」というタイトルをつけてしまうやんちゃ心のあるこの二人のタフでクールな一曲に(この「い・け・な・い」をめぐる一悶着を、牧村さんという当時の製作責任者が回想しています)。
「なんか、悩まなくてもいいかも。僕は僕なんだから」
そう思えるかもしれない。
テレビに出てきて演奏するときは、清志郎さんの相方・CHABO(チャボ)さんがギター弾いてました。
彼もかっこいい!
忌野清志郎・坂本龍一 「い・け・な・いルージュマジック」(1982年2月)
作詞・作曲・編曲
忌野清志郎・坂本龍一
藤谷蓮次郎
二○二二年四月五日