コラム 落語名演音源二八 

 休憩(番外)

    なぜ今回、柳家の系列がないのか?


 二十八席を紹介する予定の今回、いよいよラストに近づいてきました。
 現在は、二十席目と二十一席目の間です。明日の二十一席目は、立川談志の一席を取り上げるつもりです。が、ここで一回お休みして、少し説明のお時間をいただきます。
 というのは、すでに気付かれた方も多いと思いますが、今回、私が取り上げるプログラムに、柳家系列のものがほとんどないのです。その理由を申し上げておきたいのです。
 あの「永谷園の味噌汁のお爺さん」こと「五代目柳家小さん」師匠は、もちろん私も大好きです。東京時代、彼の「時そば」や「親子酒」を寄席で見て、本当に感激したものです。故・小三治師が言うとおり、派手な感じは全くなく、最初は「どこが面白いんだろう、この人?」と思いながら聴いていたのですが、「どこが?」と問われると答えにくいのですが、圧倒的な安定感というか、自然体のまま相手を打ち負かす剣の達人のような凄みを感じるほどでした。
 というわけで、彼や小三治師のCDも何枚も集め、よく車の中で聴いていました。
 が、それを友人に貸しにいく(「柳家系の落語CDを貸してくれ」というので)途中で、車上荒らしにあってしまい、柳家系プラスそこに縁の深い三代三木助師や八代文楽師などのCDを、軒並み盗まれてしまったのです。
 もう二十年も前のことです。今思い出しても悔しいです。たぶん、持っていった奴らには、そのCDの価値など全く分からなかったでしょうけど、仕方ありません。
 それらのCDは、その時点でもう手に入らなかったので、どうにもならなかった次第です。
 特に、小さん師の「万金丹」と小三治師の噺のマクラ「駐車場物語」などは大好きだったので、かえすがえすも残念です。
 
 というわけで、今でも聴けるCDやカセットをテーマにした今回の企画には、柳家は出せないのです。
 残念無念!

         藤谷蓮次郎
                           二○二二年二月八日