連歌 豆知識
連歌の色々な事項を説明していきます
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
時事句(じじく) 令和8年2月
連歌のジャンルの一つに、時事句というものがあります。
いわば 「ニュースネタ」 です。
現在起こって話題になっている事を付句の裏にひそませて、
仲間内で密かにたのしむものです。
時事川柳のようなものですが、
連歌ではこういった茶化しは好まれないので、
出すとしても何度もというわけにいきません。
(山田孝雄『連歌概説』では一度きりとあります)
位置的にも起承転結の転の部分、
世吉(44句)だと名残表あたり。
初折表や名残裏では避けます。
長く続けるのもしつこくなるのでやめておきます。
そして大事なことなのですが、
その句が時事句であることがはっきり表にでないようにします。
後の時代の人が見たら、
時事句とわからないようにしつらえるわけです。
平野図書館連歌会では、今、有志数名で
含翠堂文庫の連歌を読む勉強会をやっています。
その中で最近、おもしろいものに出会いました。
H8-30「連歌集」 明和2年
の冊子におさめられている、千句連歌のうちの
第四「蛍」の百韻の三の折のあたりです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
三折
5 出るともあらぬは蜑(あま)の小家にて 由章 雑 人倫・居所
6 田面の早苗取や果けん 宗俊 夏 植物
7 治まれる国の姿やしらるらん 尚喜 雑
8 運ふ貢の数は多しも 宗之 雑
9 馬車つつけ続ける都路に 宗名 雑 動物
10 物見の庭は嘸(さぞ)な賑はふ 宗政 雑 居所
11 声々に謡ふは月の席(むしろ)にて 立永 秋 光物・時分
12 長き夜あかす作る詩(からうた) 常元 秋 時分
13 暖めて酌やか(噛)みつる酒ならん 宗俊 秋
14 旅の首途(かどで)を祝ひこそすれ 宗永 雑 旅
三折裏
1 ゆゆしきは給ふ受領の粧にて 用成 雑
2 古されし身を悔る明暮 惟明 雑 人倫・述懐
3 偽(いつはり)をしらて頼むははかなしな 宗俊 雑 恋
4 尽ぬ恨の浅からんやは 由章 雑 恋
5 送りぬる文の傳(つて)たに絶果て 利器 雑 恋
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
参考のため、季節と句材を記しました。
夏から雑、述懐、恋へ、いちおう よくある展開です。
時事句っぽいものはありますが、
古い時代の出来事ととれば、さほど気にせず
普通の流れに見えます。
(ちょっと同じような展開がしつこく続きすぎかもしれませんが・・・)
でも、三折裏6で「早苗」の語が出てたのを見て、つい・・
2月におこなわれた衆議院選挙で
高市「早苗」首相率いる自民党が圧勝したことを
思い浮かべてしまいました。
実はこの時期、どこの連歌会でも夏の季語である「早苗」が
時事句の材料として登場していたのです。
で、上の連歌はもちろん
高市早苗首相ではないのですが、
(なかなかはずれない)色眼鏡でのぞいてみると、
このあたりの展開がすべて
昨今の時事句に見えてきて
困ってしまいました。

6 の早苗が票を取り果てて
7 おさめる国、
8 そこに貢ぎがたくさん送られる、
9 車もいっぱい連なって表敬訪問する、
10 見物人も(携帯を持って)集まって、自民党会館の庭は賑わう。
11 月が出る、歌も歌われる、
12 夜になっても詩を作って、
13 祝杯。
14 旅はトランプ詣で?
裏 1 ゆゆしきものは大臣のポスト。
2 かたやオールド中道は悔いにあけくれ、
3 勝てるとたのんだのは はかなきこと、
4 恨みは尽きず深い。
5 送った文は絶えて・・
・・・などと目にうつってきて本当に困惑してしまいました。
それにしても、あまりにも合いすぎる!
明和の頃にもこんなことがあったのでしょうか?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
歳旦三つ物(さいたんみつもの) 令和8年1月
お正月、連歌の宗匠たちは、「歳旦開(さいたんびらき)」といって
吉日に席を設け、門人らと歳旦の句会を開きます。
歳旦三つ物(さいたんみつもの)とは その折
三人で発句・脇・第三を交代しながら作る、合計九句の作品のことです。
紹巴が北野天満宮に奉納したものが最初で、
俳諧でも重要視され、後には宗匠・高弟・知友らが三人で作句を披露する
お正月恒例の祝賀行事になっていきました。

歳旦の句をまとめた 俳諧の歳旦帳
右頁、三人が交代で発句・脇・第三を作っています
絵を添えて弟子たちに配られた 歳旦の摺り物