登場人鳥 ミャーコ:外伝の主人公 棚卸大好き
シホ:カフェ温順の副店長
ジュン:オーナー名前だけ登場
マリ:ミャーコの同僚
他
今日は、カフェ温順の毎月恒例の棚卸がおこなわれようとしていました。
そんな中、ミャーコは意気揚々とフリッパーを後ろにして、力強い足取りで自信を持って出勤していました。
カフェ温順の従業員用の入口に近づくと、ぴたりと止まり、一言「よし、頑張る!」と気合を入れて、ドアをフリッパーで押して開けて中に入り、すぐにタイムカードを押した。タイムカードは、かわいた音で時刻を打刻すると、すぐに上がってきた。
「よし!今日は頑張るぞ♪」
ミャーコは気合を入れた。
「ミャーコちゃんおはよう。今日は、あなたの得意な棚卸しだから頑張ってね」
「副店長お早うございます。本日もよろしくです」
声を掛けてきたのは、副店長のシホであった。シホは、アルバイトから様々な経験を積んで、副店長までなり、そして、次の店長候補とされているペンギンであった。ただシホは、しっかりとしているという感じではなく、どこか抜けている所があって、そこがとても憎めなくていい所だなと、ミャーコは思っていた。
「さてするか」とミャーコは気合を入れる為にフリッパーをパタパタさせた。そしていつものパートナーのマリと一緒に倉庫へと入った。
カフェ温順は、飲食店であったので主に食品の在庫管理を行っていた。カフェで出される様々な茶葉や、コーヒー豆、ペンギンソーダの素、パフェの素、アンチョビーサンドイッチの用のアンチョビーであった。これらの食品はg単位及び魚は匹単位で納入されていた。その中で特に人気があったのはアンチョビーサンドイッチであった。この商品は特に消費が早く他の店では在庫が切れることもままあった。しかし、カフェ温順本店ではそのようなことは決してなかった。アンチョビーが獲れる漁場が近くにあることと、そしてなにより在庫管理がしっかりしているからであった。その一端を担っているのがミャーコだった。ミャーコが担当し始めてからアンチョビーの在庫がちょっとしか狂うことがなくなったのであった。そのちょっとの狂いというのが、ペンギンらしい理由であった。まぁ自分たちの好物であるアンチョビーを目の前にして本能が我慢できるはずもなく、ついパクッと食べてしまうからであった。でもそれは常識の範囲内であったら許されていた。ただそれがすぎると、店の経営が成り立たなくなってしまうので、こうして管理していた。
「よしまずは、茶葉からね、えっと何gかし…」
とミャーコが言い終わらないうちに
「誤差50g以内、問題なしです」
とマリが答えた。
「流石早いわね…じゃあ次はペンギンソーダの素」
「ソーダの素、入庫・出庫・在庫とも誤差なしです」
という風に次々とこなしていった。
この日はとても順調で午前中のうちに最難関のアンチョビー以外をすべて終えた所で副店長のシホが
「疲れたでしょう、そろそろ昼食にしまししょう」
と入ってきた。そうして3羽で外に出て、昼食をとった。
昼食はまかないがカフェ温順のルールであったそれはナンキョクオキアミのサラダだった。これは、宿泊の客やVIPにしか出されないものであった。それは貴重というわけではなく、南極支店から取り寄せているのと、養殖しているからであった。だから、味見を兼ねて賄いとして出しているのである。
それが食べ終わると、シホが午後もよろしくねと言って店の方へ帰っていった。
ミャーコとマリは、それを見送ると、すぐに倉庫に入りいつも足りなくなるアンチョビーにとりかかった。
昔、アンチョビーは、在庫管理をしなくてもたくさん獲れたのだが、今は環境の影響かなかなか入荷できなくなっていた。そのことで店長のジュンは何か秘策があるようだと、ミャーコは噂に聞いていた。そうなったら少しは楽になるのにとミャーコは思っていた。
「でも今は…目の前にあるアンチョビーの在庫確認ね…」
そんな独り言にも似た言葉を聞いてマリは不思議そうな顔をしたが、この作業をする時はいつものことだなと納得して頷いて作業に取り掛かった。
「まず1月前の入荷分から…マリ、どんな感じ?」
マリは水槽をのぞき込みながら
「一月前は2尾だけね、これは管理表通りです」
と言ってニコニコした。その理由はアンチョビーの在庫期限はほぼ一月と決められていたからである。つまりその時点で在庫になったアンチョビーは処分されることになるのだが、それは棚卸しを担当したペンギンが貰えることになっていた。だからニコニコしてるのである。
「うん、それは良かった」
「よし次、その2日後は…」
「在庫は、60尾で、-1なので許容範囲です」
という具合に今日は珍しくどんどんと数値が合致していった。
「私が棚卸しをしてあわないわけがないから」
ミャーコは自信を持って言った。事実ミャーコが担当している時、ずれがほとんどなく、時間も素早く終わることで有名であった。それによって必殺棚卸人との異名が定着していた。ミャーコもそれが嬉しかった。
そうこうしているうちに、ミャーコ達は最後の水槽にとりかかった。そこで事件が起こったのだった。少し少ないとかちょっと多い分には問題がないのだが…20尾以上もアンチョビーが多かったからである。まぁ入庫の時期によってはアンチョビーの産卵の時期と重なり卵が孵ってたくさん増えることはあるのだが、今はその時期ではなく、大量に増えることなどありえなかった。考えられることと言えば、今月分の入庫と来月分の在庫を混入して入れてしまうことであった。それを急いで確認する為シホに確認を取るため、内線をかけた。しばらくしてシホが出て確認すると、来月分の在庫はまだ到着していないことが分かった。シホは店長に確認してみるねと、内線をおいた。マリちゃんは、今日は早く終わって美味しいアンチョビーにありつけるとおもっていたのだが、ちょっとがっかりしていた。そんな中、ミャーコは、他の理由を考えてみて、もう一度マリと在庫を確認したが、理由はみつからなかった。そう、減ることはあっても、増えるというのはありえなかったからだ。2羽は、思案にくれ、急にどっと疲れが出て腹這いになって眠くなりうとうとし始めた時、突然内線がなった。
「ごめん、ごめん店長が、昨日から始めた養殖のアンチョビーを一緒にしっちゃたんだって…だか20尾増であってるからって…ごめんね…」
シホからであった。
「…養殖?ですか…わかりました、有難うございます」
と言って内線を切った養殖という言葉が引っかかったが、そのことをありのままに告げるとマリはほっとした。
「良かったこれで、在庫の2尾貰って帰れるね、ミャーコ」
「うん」
棚卸しが終わったことを確認したシホが急いで倉庫にやってきた。
「今日はご苦労様」と言って在庫になっていたアンチョビーをすくって2羽に1尾ずつ渡した。
「ちょっと待っててね」と言って奥にちょっと消えると何かを持って2羽の所に来た。
「店長がおわびにって、奥からアンチョビーとオキアミをあげてね」
と言いながら新鮮なナンキョクオキアミ10匹ずつと少し大きめなアンチョビーを1尾ずつ持って来てくれた。
「わぁいいんですか?有難うございます」と2羽は声を揃えていった。
「今日は疲れただろうから、帰っていいわよ」
とシホが告げると2羽はお先に失礼しますと、頭を下げて帰っていった。
ミャーコとマリは、左右フリッパーを広げながら楽しく話しながら帰った。
ミャーコの顔は充実していた。こんな楽しいことを信頼して任せてもらえることに喜びを感じていた。
またこれを来月もしたいなと思っていた。必殺棚卸人の名にかけて…
2羽の歩く影は、いつの間にか長くなっていた。