あなたは、その、愛する人より。
いつか誰だって、人は死ぬ。どんなに離れることなく愛した人とも「さよなら」を言う日は来る。たとえばあなたは、その愛する人より1日長く生きたいだろうか。それとも1日短く生きたいだろうか。いろんな人がいる。道を踏み外してしまって「こんなはずではなかった」と拳で壁を打ちつける人。みんながうらやむ生活だけど、なのにどうしてこんなに悲しいんだろうと毛布の中で震える人。合コンでピエロを演じては、最後は缶チューハイを飲みながらまた1人でいつもの道を帰る人。会社では自分だけにみんなが矢を飛ばしてくる。年老いて、それでもがんばってるんだけど、きのう駅のホームで若い人に「じゃまだ」と突き飛ばされた人。いいよいいよ。そんなことはどうだって。そんなのは中学生の頃の恋愛くらいにどうでもいいことだよ。「人は1人で生きてるんじゃないだぞ」と大人からいつも言われた。金八先生をパクって「人」という漢字の意味を、さも自分が考えたことのように得意顔の1000人から聞かされてきた。だけど。だけどわたしがほんとのこと言おう。人は1人で生まれて、1人で死んでゆく。人は1人でしかない。けれど人は。だからこそ人は。だから人は、刹那に触れ合う人との出会いにこんなにも感動するんだ。友だちが100人いるなんて、そんなの自慢なんかになりはしない。孤独な自分ひとりを愛せない人の人生なんて、そんなにさびしくて悲しい人生はないんだよ。<あなたは愛する人より1日長く生きたいだろうか。それとも1日短く生きたいだろうか。>だけども、それを考えたとき、どうして。どうしてこんなに胸は傷んで。涙が出てくるんだろう。