「ちゃんと泣ける子に育てよう」 大河原美以 著
自分にも思い当たる節が多々あるため、偉そうなことを言える立場にはない、という釈明からこの本の紹介を始めさせて頂きます。
親は自分に都合の良い子どもだけを受け容れようとする傾向があります。
例えば楽しそうにニコニコ笑う子どもには寄り添えるけど、
泣きべその子や、怒っている子には、突き放すような態度を取ってしまう。
そんなことはないでしょうか?
人間は、目に見えない、手で触れない、感情というものを如何にして認識出来るようになるのでしょうか。
子どもは、周囲の大人に感情を共有してもらい、「嬉しいんだね」とか「悲しんでいるんだね」とか、
自分の身に到来した感情を名付けてもらうことで、それをそれとして初めて認識できるようになります。
このプロセスを「感情の社会化」と言います。
子どもたちは、このような過程で自分の感情を認識し受け止められるようになるのですが、
前述のように多くの親(自分を含む)は、悲しみや怒り、不安などのネガティブな感情を抱えた子どもに対して、
「いつまで泣いているの!」や「もう怒るのやめなさい!」などの言葉を発して突き放してしまう傾向にあります。
子どもは親とそのようなネガティブな感情を共有してもらえないことで、
自分の抱えたネガティブ感情に気づけなくなったり、その対処の仕方が分からないまま成長してしまいます。
そうやって親にとって都合の良い自分を「自分」として、そうではない自分を「自分ならざる者」として成長してきた結果、
ある時点で、疲れ切って燃え尽きて立ち止まってしまう、または自傷や夜遊び、家庭内暴力などの問題行動を取るに至るのです。
一方で、困難に遭遇してネガティブな感情に襲われたとき、その対処の仕方が分かっていれば、自分の力でその状況から立ち直る事ができます。
そのような生きる力の強い人間を育てるために、親に出来る感情の育て方について書かれているのが本書です。
その感情の育て方の基本は、子どもが小さな頃から、怒り、悲しみ、悔しさなどのネガティブな感情を抱えて泣いたり、怒ったりしている時に、
そばにいる親が、その子を抱きしめて、「悲しかったんだね」、「悔しかったんだね」と子どもが抱えているであろう感情を言語化してあげる、というものです。
親が与える安心感の中で、このように感情を言語化してもらいうことで、その感情がその子の中で社会化され、
次第に親無しでも、その感情に対処していけるようになるのだそうです。
著者は本書の中で以下のように主張します。
〝子どもが「困ったときに助けを求めて、大人の腕の中で泣ける」ということ、
こんなシンプルなことを回復することができれば、子どもたちの感情を育てることは難しいことではないのです。
そのためには「黙って泣かせてくれる大人の腕」が必要なのです。〟
私の実感としても、子どもはネガティブな感情について親や友達と共有出来ていない、と感じる事が多いです。
子どもたちから困難を取り除くではなく、困難と共に生きる力を育てるのが、自分を含む大人の大切な仕事なのだと思います。
そのために私たちに出来ることを学びとれる素晴らしい一冊でした。
ぜひ手に取ってみてください。