高校生たちは、中間テストも終わり、各校ともしばらく体育祭の準備に大忙しの様子でした。
当日は天候に恵まれて、みんな真っ黒にまたは真っ赤に日焼けしておりました。
準備は大変だったけど、皆一様に充実した表情で当日の様子を語ってくれました。
普段あまり関わり合いを持たない他者と、意見の相違を超えて折り合いをつける、という経験は、
人を一回りも二回りも成長させてくれるのだなぁ、と彼らの話を聞きながら感じておりました。
ご家庭にお邪魔して親御さんのお話を伺っていると、度々受ける相談があります。
それは習慣に関する相談です。
学習習慣だけではなく、スマホの習慣、ゲームの習慣、起床や睡眠、運動などの習慣に至るまで、
様々な習慣に関するご相談を受けます。
何に時間を費やすか、その時間の費やし方の傾向性が習慣を作ります。
一日24時間という限られた時間の中で何にその時間を費やすか、
その時間の使い方がその人の在りようにも大きな影響を与えると私は考えます。
それほどまでに大切な習慣ですが、形作るに難しく、
私も意志薄弱な人間なので、何度も失敗を重ねてきました。
ここで一度考えてみたいのは、今の私の言葉が示すように、私達は習慣形成を意志の力の為せる技と思いがちですが、
そもそも、習慣の形成を意志の力に頼るという、この考え方自体に最初のボタンの掛け違いがあるようなのです。
先日読んだ本の中で、人間の行動を司るのは三つの要素である、という話を読みました。
読んだ本はこちらです。
「習慣超大全 スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法」
これはスタンフォード大学行動デザイン研究所所長で行動科学者のB.J.フォッグ氏が人間の習慣形成に関して記した一冊です。
書籍の中で以下の等式が紹介されていました。
B = M・A・P
Bはbehavior(行動)、Mはmotivation(やる気)、Aはability(能力)、Pはprompt(きっかけ)を表しています。
この等式の表す意味は、人がある行動を取るか否かは、
その行動をどれだけ取りたいと思っているかを表すやる気と、
その行動を取るために必要とされる能力と、
その行動を取るためにきっかけ、
この三つの要素によって決定される、ということです。
やる気があって、その行動を起こすための能力が十分に高ければ、
きっかけを与えられることで実際に行動が起こりますが、
やる気も無く、その行動を起こすための能力も低ければ、
きっかけが与えられても人は、その行動を取ることはありません。
例えば、スマホを操作する、という行動は、本人のモチベーションも高く、
起動することは容易い(換言すれば操作者のスマホを操作する能力は十分に高い)ので、
ちょっとしたきっかけさえあれば、人はすぐにスマホを操作するという行動を取ります。
対して、ダイエットのために毎朝30分ジョギングする、という行動を考えてみましょう。
運動習慣のない人にとっては、30分のジョギングは決してモチベーションが湧く行動ではありませんし、
30分走り切るという行動に対する能力も決して高くはありません。
だからこの行動は、きっかけを与えられても、行動に移されない可能性が高くなります。
このように、人の行動は、やる気、能力、きっかけ、の三要素が影響し合って、
その行動を取るか、否かが決定されています。
習慣というのは、ある行動が継続されるようになった状態のことです。
先述したように私達は習慣形成をするときに概して、やる気、つまりモチベーションに依拠してしまいがちですが、
やる気というのは、その日の状態によって大きく変動するため、
習慣という行動の継続性を維持する際に、第一に頼るべきものではないのです。
前述したB = M・A・Pという人間の行動原理を考えれば、
習慣形成のために私たちが依拠するべきは、コロコロと移り変わるやる気ではなく、
その行動を取るための能力の問題をどう調整し、きっかけを日常生活の中でどう仕組み化するか、であることが分かります。
次回に続きます。