ワインのお供として人気のチーズですが、食べる人とチーズの種類によっては「リステリア症」という感染症を起こす可能性があります。

○リステリア症とは?
 リステリア症は、リステリア菌という細菌によって引き起こされる感染症です。
症状は患者の健康状態やリステリアの菌株の種類,菌の量に左右されますが、通常は初期に発熱(38~39℃)・筋肉痛、ときには吐き気や下痢といった胃腸炎症状を引き起こすこともあります。これらの症状だけのこともありますが,さらに,神経系統まで感染が広がると、頭痛、首が硬くなる、昏迷、ふらつき、痙攣等が起こることがあります。重症になると、髄膜炎・敗血症を起こすことがあります。治療には、ペニシリン・アンピシリンなどの抗生物質を使います。
 アメリカ合衆国では、毎年約2500人が重症のリステリア症となり、そのうち、約500人が死亡していると推定されており、日本でも、北海道で2001年3月に発生したナチュラルチーズによる食中毒は、リステリア菌による集団感染だったことが判明しています。また、チーズ以外にも輸入ソーセージや生ハムなどから、リステリア菌が検出されています。

○どんな人がかかりやすいの?
 健康な成人・こどもは、ときにリステリア症になっても、重症になることはまれで、リステリア症になりやすいのは、以下のような人たちです。
・妊娠している女性 : 健康な成人より20倍リステリア症になりやすいです。
・胎児・新生児 : 妊娠中の感染は、妊娠している女性よりもおなかの中のこども(胎児)に深刻な影響を与えます。胎児の段階で感染し、リステリア症の新生児として出産されることもあります。
・免疫機能が弱まっている人たち。臓器移植を受けた人たち。
・ガン・糖尿病・腎臓病の人たち : これらの人たちは、免疫機能が弱まっている場合があります。
・エイズ患者 : 正常な免疫機能の人たちより300倍リステリア症になりやすいです。
・ステロイドによる治療を受けている人たち : これらの人たちは、ステロイドによる影響で免疫機能が弱まっている場合があります。
・老人 : 老齢になるにつれて免疫機能が弱まっている場合があります。

○予防方法は?

基本的な食中毒対策としては、
・動物性の生の食物(例えば、牛肉、豚肉、にわとり・七面鳥の肉等)はよく加熱すること。
・生野菜は食前によく洗うこと。
・加熱していない肉は、野菜や調理済みの食物、食べる用意ができている食物から離しておくこと。加熱していない肉を盛っていた皿をそのまま食事に使わないこと。
・滅菌していない生の牛乳、あるいは滅菌していない生の牛乳で作った食物を避けること。
・加熱していない生の食物を扱った後は、手、包丁、まな板をよく洗うこと。
・残り物の食物や食べる用意ができている食物(例えば、ホットドッグ)は、食べる前に強く熱を加えること。

リステリア症対策としては、
欧米では1985年以降、ゴルゴンゾーラ、ナチュラルなどのチーズ類、ホットドッグ、肉の瓶詰め、キャベツのコールスロー、スモークサーモンなどから集団発生して、20-60人が死亡した例があります。
日本でもイタリア産のゴルゴンゾーラチーズ(青かびチーズ)、フランス、スイス、デンマーク産のチーズからリステリア菌が検出されており、チーズ以外にも輸入ソーセージ、生ハムなどに汚染例があったといわれています。
アメリカFDAとFSIS(米農務省食品安全検査局)は、特に妊娠中の女性や、新生児、高齢者、抵抗力が低下している人に対して、「加熱が不十分なホットドックは食べない」「カマンベールや、青カビチーズなどやわらかいチーズは食べない」「低温殺菌の牛乳は飲まない」よう呼びかけるとともに、症状がでたときは、すぐに医師に連絡するよう、警告しています。
これらを参考にして、自分の体と相談して、食べるようにしましょう!