フォロワ―の皆様方、並びにいつも私のブログをお読みいただいている皆様方、大変お久しぶりでございます。

 

 

業務過多により、ブログ更新が滞っておりまして申し訳ありません。

 

 

不定期で大変恐縮ではございますが、「日本史を深める」ブログをお読みいただければと存じます。

 

 

何卒、宜しくお願い申し上げます🙇

 

 

 

 

みなさんは、「ナショナリズム」という用語をご存知ですか❓

 

 

ナショナリズムとは、国家を人間社会最高の組織体と考え、国家権力が社会生活の全領域にわたって統制力を発揮することを認める立場のことです。

 

 

つまり、国家の発展をすべてに優先し、国民個人の自由や利益は犠牲とされる傾向が強くなるということなのです。

 

 

このナショナリズムは、国家主義などと訳されます。

 

 

 

1919(大正8)年8月1日、日本国内で1つの国家主義団体が結成されました。

猶存社(ゆうぞんしゃ)です。

 

 

今回は、この猶存社について考えてみたいと思います。




猶存社は、満川亀太郎(みつかわ かめたろう)や大川周明(おおかわ しゅうめい)らによって創設されました。

 

 

満川亀太郎は、大正後期・昭和期の国家主義者で、大阪府生まれのジャーナリスト。拓殖大学で東洋事情・ロシア事情・植民政策などの講義を担当したことでも知られています。

 

 

大川周明も大正後期・昭和期の国家主義者で、イスラム研究の先駆者として知られています。日本が太平洋戦争で敗戦後、A級戦犯容疑で逮捕されますが、精神に異常をきたし、極東国際軍事裁判東京裁判)で東条英機の頭をたたき免訴となった人物です。(大川周明が東条英機の頭をたたく映像は、YouTubeでもご覧いただけます)

 

 

この猶存社には、満川と大川のほかに、もう一人重要な人物が存在します。

 

 

それが、北一輝です。

 

 

北は新潟県佐渡の生まれで、1936(昭和11)年起きた二・二六事件の首謀者として銃殺刑に処された人物です。

 

 

北一輝は1919(大正8)年、上海において『国家改造案原理大綱』(のち『日本改造法案大綱』と改題)を書きあげ、この著作は猶存社によって秘密出版され、ひそかに関係者に配布されました。

 

 

国家改造案原理大綱』の内容は、クーデターによる天皇中心の国家社会主義的な国家改造を行おうとするものでした。

 

 

国家社会主義とは、国家の手によって社会主義の実現をはかろうとする考え方であり、社会主義とは資本主義を否定して、階級対立のない平等な社会を実現しようとする考え方になります。

 

 

 

北は著書のなかで、大企業の国営化や企業の利益の労働者への配分、言論・表現の自由などの民主的改革を主張するとともに、一部の特権階級を否定するべく、華族制の廃止をうったえています。しかし対外的には、朝鮮・台湾の植民地を固定化するとともに、戦争を肯定しています。

 

 

 

こうした北の考え方をまとめた『国家改造案原理大綱』を中心教典にして創設された猶存社は、上海から帰国した北を迎え、機関紙『雄叫(おたけび)』を発行して、国家改造運動の拠点として活動を開始したのです。

 

 

また、猶存社は学生運動の指導にも努めています。

 

 

東京帝国大学東大)の「日の会」、慶應義塾大学の「光の会」、早稲田大学の「潮(うしお)の会」、拓殖大学の「魂(たましい)の会」などを育成しました。

 

 

 

対外進出(戦争を肯定)と国家改造を結び付けた、革新右翼(右翼とは国家主義を支持する勢力のこと。右翼と対立する考え方が左翼です)の代表的存在であった猶存会でしたが、1923(大正12)年、大川と北の対立が原因で解散してしまうのです。

 

 

 

 

北一輝は、明治維新を「天皇を指導者とする国民運動」であると考えていました。

 

 

この運動により国民は権力者であった武士から解放され、日本国は天皇と国民とが一体化した、天皇を代表とする民主的な国家になったと言います。

 

 

この民主的な国家のあり方を妨害しているのが、財閥や政党や官僚などの一部の特権階級である。

 

 

だからこそ、国民の代表である天皇を中心に国民がクーデターを起こし、現憲法を停止して新たな憲法をつくり、議会を解散して、国家改造を行うための議会と政府を設置することを主張したのです。

 

 

 

こうした考え方が、昭和初期の軍部や右翼に絶大なる影響を与えます。

特に陸軍青年将校などにクーデターの指針として読まれ、二・二六事件の教典とみなされることになったのです。

 

 

 

話が少しそれましたが、次回は猶存社が創設された時期をふまえた上で、この国家主義団体が創設された背景を考えてみたいと思います😊

 

 

 

 

 

 

 

書いて深める日本史: 思考して表現する記述問題集