日本神話には様々謎の部分があるのだが、

その中で「ツクヨミ」には何故殆ど逸話が無いのか?

という謎がずっと引っ掛かっていた。

今回は「ツクヨミ」の存在について考察してみる。

記紀の記述を引用する。

古事記>

於是、洗左御目時、所成神名、天照大御神。次洗右御目時、所成神名、月讀命。次洗御鼻時、所成神名、建速須佐之男命。須佐二字以音。

右件八十禍津日神以下、速須佐之男命以前、十四柱神者、因滌御身所生者也。

此時伊邪那伎命、大歡喜詔「吾者生生子而、於生終得三貴子。」卽其御頸珠之玉緖母由良邇此四字以音、下效此取由良迦志而、賜天照大御神而詔之「汝命者、所知高天原矣。」事依而賜也、故其御頸珠名、謂御倉板擧之神。訓板擧云多那。次詔月讀命「汝命者、所知夜之食國矣。」事依也。訓食云袁須。次詔建速須佐之男命「汝命者、所知海原矣。」事依也。

 

伊弉諾尊が黄泉の国に行って逃げ還って来た後、

禊ぎをしてアマテラス、ツクヨミ、スサノヲの順番に生まれ、

それぞれ、高天原、夜之食国、海原を治める様命じた。

これをどう解釈するか、これだけでは判らないが、

太陽の神、月の神は陰陽の関係として妥当だが、海原の神というのは唐突過ぎる。

唐突ではあるが、航海では夜の星の位置が重要である。

月読とはそういう意味である事は明らか。

 

日本書紀>

既而伊弉諾尊・伊弉冉尊、共議曰「吾已生大八洲國及山川草木。何不生天下之主者歟。」於是、共生日神、號大日孁貴。大日孁貴、此云於保比屢咩能武智、孁音力丁反。一書云天照大神、一書云天照大日孁尊。此子、光華明彩、照徹於六合之內。故、二神喜曰「吾息雖多、未有若此靈異之兒。不宜久留此國。自當早送于天而授以天上之事。」是時、天地、相去未遠、故以天柱舉於天上也。

次生月神。一書云「月弓尊、月夜見尊、月讀尊。」其光彩亞日、可以配日而治。故、亦送之于天。次生蛭兒。雖已三歲、脚猶不立、故載之於天磐櫲樟船而順風放棄。次生素戔嗚尊。一書云「神素戔嗚尊、速素戔嗚尊。」此神、有勇悍以安忍、且常以哭泣爲行。故、令國內人民多以夭折、復使靑山變枯。故、其父母二神、勅素戔嗚尊「汝甚無道。不可以君臨宇宙。固當遠適之於根國矣。」遂逐之。

 

一書曰、伊弉諾尊、勅任三子曰「天照大神者、可以御高天之原也。月夜見尊者、可以配日而知天事也。素戔嗚尊者、可以御滄海之原也。」既而、天照大神在於天上曰「聞、葦原中國有保食神。宜爾月夜見尊就候之。」月夜見尊、受勅而降。已到于保食神許、保食神、乃廻首嚮國則自口出飯、又嚮海則鰭廣鰭狹亦自口出、又嚮山則毛麁毛柔亦自口出。夫品物悉備、貯之百机而饗之。是時、月夜見尊、忿然作色曰「穢哉、鄙矣。寧可以口吐之物敢養我乎。」廼拔劒擊★。然後復命、具言其事、時天照大神、怒甚之曰「汝是惡神。不須相見。」乃與月夜見尊、一日一夜、隔離而住。

(★=さつ・・・禁止文字のため)

日本書紀では、伊弉諾,伊弉冉が協議して大日孁貴(おおひるめのむち)、月読尊、蛭子、素戔嗚尊の順に生まれたと、生まれた背景の違いがあるが、生まれた順番は変わらない。

日本書紀では、月夜見尊が食事を提供した保食神を斬ってしまった逸話を以て、

アマテラスとツクヨミが仲違いし、昼と夜に分かれたと説明している。

ところが、古事記に於てはアマテラスとスサノヲの仲違いとなっていて、

スサノヲが高天原を追放された後の逸話になっている。

 

古事記>

又食物乞大氣津比賣神、爾大氣都比賣、自鼻口及尻、種種味物取出而、種種作具而進時、速須佐之男命、立伺其態、爲穢汚而奉進、乃殺其大宜津比賣神。故、所★神於身生物者、於頭生蠶、於二目生稻種、於二耳生粟、於鼻生小豆、於陰生麥、於尻生大豆。故是神產巢日御祖命、令取茲、成種。

(★=さつ・・・禁止文字のため)

スサノヲが食事を提供した大気津比売神を斬った逸話になっている。

不思議な事に、

古事記には大気津比売神の遺体から植物の種子が出たという話はあるが、

日本書紀には保食神の遺体から植物の種子が出た話はない。

ところが、日本書紀には古事記の種子の話の続きになる逸話が残されている。

 

日本書紀>

一書曰、素戔嗚尊所行無狀、故諸神、科以千座置戸而遂逐之。是時、素戔嗚尊、帥其子五十猛神、降到於新羅國、居曾尸茂梨之處。乃興言曰「此地、吾不欲居。」遂以埴土作舟、乘之東渡、到出雲國簸川上所在、鳥上之峯。時、彼處有呑人大蛇。素戔嗚尊、乃以天蠅斫之劒、斬彼大蛇。時斬蛇尾而刃缺、卽擘而視之、尾中有一神劒。素戔嗚尊曰「此不可以吾私用也。」乃遺五世孫天之葺根神、上奉於天。此今所謂草薙劒矣。初、五十猛神、天降之時、多將樹種而下、然不殖韓地、盡以持歸。遂始自筑紫凡大八洲國之內、莫不播殖而成靑山焉。所以、稱五十猛命、爲有功之神。卽紀伊國所坐大神是也。

一書曰、素戔嗚尊曰「韓鄕之嶋、是有金銀。若使吾兒所御之國、不有浮寶者、未是佳也。」乃拔鬚髯散之、卽成杉。又拔散胸毛、是成檜。尻毛是成柀、眉毛是成櫲樟。已而定其當用、乃稱之曰「杉及櫲樟、此兩樹者、可以爲浮寶。檜可以爲瑞宮之材。柀可以爲顯見蒼生奧津棄戸將臥之具。夫須噉八十木種、皆能播生。」于時、素戔嗚尊之子、號曰五十猛命。妹大屋津姬命、次枛津姬命、凡此三神、亦能分布木種、卽奉渡於紀伊國也。然後、素戔嗚尊、居熊成峯而遂入於根國者矣。棄戸、此云須多杯。柀、此云磨紀。

 

一書の四では、スサノヲは朝鮮半島に渡ったものの、

此処には居たくないと日本列島に帰ってきたという記述。

更には五十猛命が天から持ってきた植物の種子を朝鮮半島では使わず、

紀伊国で使ったと記述。

これが古事記で大気津比売神を斬り

出てきた種子を神産巣日祖神が集めた後、

何に使ったのかという続きの説明になっている。

つまり、古事記の逸話を日本書紀が補完する様な形になっている。

 

一書の五では、朝鮮半島に渡り、樹木の植林をしたという記述と、

五十猛命等は紀伊国に渡って植林したという記述がある。

 

古事記の云う大気津比売神を斬ったスサノヲと、

日本書紀の云う保食神を斬ったツクヨミは

全く違った逸話として描かれてはいるが、

実は同一の話と考えても矛盾しないのではないかと思われる。

 

保食神を斬ったツクヨミは以後の消息は無くなってしまう。

同一の存在が別々に描かれるべき処、

別々に語れる程の逸話が無い為、どちらかの存在に絞って描くしかなくなる。

結果的にツクヨミの直接の存在意義は失われたものと思われる。

そして、この集団が、最近云われている説に繋がるのではないかと推察する。

「人類の文明、日本起源説」

世界四大文明というのは日本でしか言われていないので使わない。

まず、「黄河文明」より古いと謂われている「長江文明」。

「長江文明」は縄文人が作った「採集+稲作」の文明と謂われている。

此時に長江文明を作った人達の子孫が

中国やベトナム、ミャンマー国境地帯に居住している

少数民族の一部に存在しているとされる。

それから「メソポタミア文明」

シュメール人は世界中を大航海して貿易をしていた

縄文の海洋民族ではないかと謂われている。

そして「エジプト文明」。

初期のエジプト文明も縄文人が作ったのではないかと謂われている。

これらの文明が興ったのが8000年弱前とされているが、

遺跡等から日本の縄文文明は少なくとも16000年程前からとされている。

昔は日本には文字が無かったとされていた為、

基準からして文明とは認められていなかった。

しかし最近では、世界中で見つかっているペトログリフ。

「ペトログリフ」とは、

「石の彫刻」を意味し、岩に彫り込まれた古代文字の事を指す。

世界中で多種類あるとされる記号の様な文字が、

日本で夥しい数見つかっている。

それが具体的に「○○文字に似ている」とか具体的に指摘され、

場合に依ては何と書かれているのか読めたりするという。

当然、縄文時代の文字なので、古い日本語として読めるという。

その為、世界の歴史学界では、「縄文文明」

或いは「日本文明」という言葉が出始めている。

世界の「○○文明」というと全て栄枯盛衰を経ているが、

「日本文明」は縄文時代から現代に至る迄、

一度も滅んでいないという特異な存在として認識されている。

本来、原始的な人間の営みから発達して徐々に文明化する筈なのだが、

約8000年弱前に突然、高度に発達した文明が起こっている為、

日本列島から海外へ人口が流出したものと考えられている。

そして考えられる原因として挙げられているのが、

鬼界カルデラ大噴火。

 

 

 

富士山が丸ごと吹き飛んで無くなってしまう規模。

関西だと琵琶湖の半分くらいの面積、

九州だと阿蘇山の外輪山の内側くらいの山が短時間で

跡形も無く吹き飛んでしまうレベルの大噴火。

この噴火によって、九州南部は壊滅し、

火山灰は東北地方迄積もる。

これが原因で日本列島から脱出して

世界各地に文明を作ったのではないかと考えられている。

それから数千年、世界各地に散らばっていた縄文人達の子孫が

日本列島に戻ってき始めた時には、

すっかり風貌も変わって渡来人と謂われる様になっていただろう。

神話でいうと、スサノヲ、大国主、ニギハヤヒや神武の時代。

古史古伝でいう処の、

ウガヤフキアエズ期がこれに当るのではないかと思われる。

これは一部を考察しただけなので、

考察を繰り返す内に修正が必要になるかもしれないが、

今の処はスサノヲとツクヨミは

同一の存在であるとしておきたい。