■子どもが「不当なことをされた」と訴えることができるように
――性犯罪をなくすためにできることはなんだと思いますか?
水井:小中学生の子が突然痴漢にあったとき、親や警察に言えない子も多いです。それはケーススタディーが足りないからです。親との関係が良好で、言っても恥ずかしくないと思っている子なら言えるけれど、「親に言ってはいけないこと」「恥ずかしいことをされたから誰にも言えない」と思って抱えこむ子もいます。性犯罪被害とは何か、正しく教えておけば「私は不当なことをされた」と言えるのに。子どもに性教育をするというと反対する人も多いのですが、必要なことだと思います。
性犯罪被害を訴えると、「被害を訴えるだけでは、何の解決にも結び付かない」というような批判が上がることがある。果たしてそうだろうか。映画の中では犯人が「やっちゃえば(強姦してしまえば)警察へは行けないだろ」と被害者に言うセリフがある。性犯罪被害経験が「人に言えないこと」だという認識があるからこそ、犯行を続ける加害者がいる。
また、これは単なる願望に過ぎないかもしれないが、映画を見て被害を知ることが、世界中にいる性犯罪被害者達の痛みや悔しさを万分の一でも「一緒に持つ」ことになればと思う。水井監督はインタビュー中に、「関心のない人にこそ見てほしいけれど、関心のない人はこういう映画を見てくれない」と言った。関心を持つことは、あなたの世界に被害者を加えること、見えなかった被害者を見える存在にすることだ。悲惨な現実を見せられても何もできない、ということはない。まず知ることが、彼ら彼女らに寄り添うことだ。
水井:はい。警察には被害者がもっとスムーズに届け出できるようにしてもらいたいですね。でも、今は「ワンストップセンター」という性犯罪被害者のための支援センターがあるんです。NPO団体であったり、任意的な団体であったりするんですが、そこに電話すると概要を聞いてくれて、必要だったら警察へ通報したり、病院や弁護士さんを紹介してくれたりするんです。
自分で警察に届けると、同じ話を4回も5回もしなければいけないことも、その回数を極力減らしていけるよう支援してくれるんです。ネットで「ワンストップセンター」で検索すると出てきます。全部の都道府県にあるわけではありませんが、被害にあった人はそういう支援センターをぜひ利用してほしいです。
こちらより
一部抜粋
http://wotopi.jp/archives/16559
原文はこちらより
http://wotopi.jp/archives/15289
日本の子どもは「NO」と言う教育を受けていない
――子どもに対する教育は、どのようなものが必要だと思いますか?
大藪:アメリカで私の子どもが年長クラスだったときに、こんな授業風景がありました。相手に「ハグしよう」って言われたときに、「自分がハグしたくなかったらしなくていいよ」と先生が言うんです。「今はハグしたくない」という人の「NO」の意志をリスペクトするべきだし、言われた方も「NO」と言われたからって傷つく必要はない、と教えるんですね。
日本では子どもに「人に優しくしなさい」「親切にしなさい」と教えるけれど、「NO」と言うことを教えない。基本的には人の言うことは受け入れなさいという教育です。そこでその人の権利は潰されてしまっている。その意識は改善点があると思います。
「NO」と言う権利を知らないと、被害に遭ったときに「言わない方が得なのではないか」「何も言わなければ人に迷惑をかけないのではないか」と思って、一人で苦しんでしまいます。