アパートのチャイムが鳴り、外から「お届け物でーす」という威勢のいい声がしたから、居留守しないでドアを開けると、立っていたのは灰色の作業服が着て眼の下にくまのある男だった。
作業服の男は何も書かれていない茶色の段ボール箱を抱えていた。
「ご注文のレジペーパーをお持ちしました」と作業服の男が言った。
「レジペーパー?」と私は言った。「そんな物頼んでいませんよ」
「あれ、おかしいな。レジスターのレシート用紙がなくなったから急いで持ってきてほしいと連絡があったのですが」と作業服の男は上着の胸ポケットからメモを取った紙を見て言った。ちなみに胸ポケットの上にTOWAレジスターと書かれた刺繍があり、この男が東和レジスターの男であることがわかった。
「届け先が違うんじゃないですか。私はそもそもレジスターなんて使っていませんから。ここは私の自宅で店舗でも何でもないですから」
「ご自宅に届けてほしいということだったのですが……、住所ってここで合っていますよね?」と作業服の東和の男は持っていたメモの紙を差し出した。
住所は間違っていなかった。その下に書いてある電話番号も名前も私の物だった。
「誰かのイタズラみたいですね。住所も電話番号も間違っていません。だけど私はレジスターを持っていないし、レシート用紙も注文していない」
「そうでしたか、失礼しました」と言って作業服の東和レジスターの男は帰って行った。