ばななのお父さんが死んだ。
吉本隆明が死んだというよりその方がわかりやすい。

彼は思想家であり詩人であり
僕もひと頃は大きな影響を受けた。
もう二三十年も前になるが
彼は母親の死に際して

死はあらゆる詐欺を含んでいる

という一行を含む詩を書いた。

詩のタイトルも
どの本に載っていたかも忘れた。
今となってはそれを調べるズクも失せた。
記憶ではこの一行はもともと意味が分かるようには書いてなかった。
たぶん彼は
母の死の雑踏の中で
人々の波に流されながら
寸借詐欺に遭い
その詐欺に
あなた任せに身をゆだねる<思想>を見ていた。
これはかっこいいことではないから
あまり詳しくは書かなかったのだ。

3月14日の僕のブログ記事『詐欺死』は
この詩句を下敷きにしていた。

ご冥福を祈る。

そう言いたいが
それを言うと詐欺になる。
だから言わない。