喉まで出かかった驚きの言葉は、高速で回転する頭の中に入り込み輝咲に届くことはなかった。

彼女の家…?

ここは富豪が産まれてくる子供の為に立てた家であり、その子供は流産したと記載されていたはず。

しかし自然すぎて違和感としてしか処理できなかった彼女の奥ゆかしさ…上流階級の者だと言われても何ら不思議ではないものだ。

勝手に利用したり見ただけでは備わらない雰囲気と当たり前の態度に、思考と感覚が大いに衝突していた。


「…人は自分と“違う”ものを忌み嫌う。…私、両親に家族として見なされなかったの。」


「…生まれた頃から、羽があったから…?」


「そうよ。…要は奇形児として扱われたわ。本当は、両親を恨んだ誰かが母体に薬を盛って胎児に影響を与えていたみたいだけれどね。」


飄々と話す輝咲に、神来斗はどう返せばいいのか分からなかった。

もしかして「流産した」との記載は、人と違う見た目の彼女の存在を認めずに隠蔽した形跡だったのだろうか?

その考えは神来斗の心を怒りと悲しみが混在した重々しいベールで包んだ。

輝咲はそれでも、上品な笑顔を神来斗に向けていた。


「…そんなに気にしないで。今は血族の事は何とも思ってないの。」


輝咲の言葉に神来斗は眉を顰める。

過去に幸せだった頃の記憶が脳裏を掠める。

確かな家族の形を知りながら、それが手に入らなかった悲しみは一生残るだろう。


「…今まで2人は、一緒に嫌な事を受け続けていたのか。」


「えぇ。だから果音と私そっくりでしょ?最初は警戒してたんだけれど、今では人懐っこい子に育ってくれて安心してるの。」


ちらりと扉の方を見ながら答える輝咲。

数秒おいてその言葉に違和感を覚えた。

あんなに仲のいい2人が、初めは距離があったかのような口振りだ。

それに、“最初は”とは?

神来斗は尽きない疑問をひたすら彼女に投げ掛けることしか出来なかった。


「…そっくりって、血が繋がってるんだから家族は似るだろ?」


「?…あぁ、私と果音に血の繋がりはないわよ。」


「えっ姉妹じゃないのか?」


「えぇ、果音は獣人の子供だもの。」


今まで話していて一番しっくりくる情報が神来斗の思考回路の負担をすっと減らしてくれる。

血が繋がってないのはともかく、果音の性格から考えると一番納得がいく。

しかしそうなると二人の関係が分からない。

どうやって出会ったのか、じゃあ果音の両親は?

雪崩のように押し寄せる疑問に神来斗の口の回転が速くなる。


「…なんか、初めて腑に落ちる情報だ。」


「うふふ、あの子本当にワンちゃんみたいな子だから気持ちは分かるわ。」


輝咲が果音の話をする時の笑顔…それは神来斗の心に安定を与えてくれた。

神来斗は彼女の笑顔には大きな違いがある事を見抜いていた。

思わず零れた笑顔はそのままに輝咲を見つめる。


「…2人はお互いの事が好きなんだな。」


「えぇ。分かりやすいでしょ?」


「…と言うより、君の笑顔で分かるよ。大切な“妹”なんだろ?」


その言葉に少し驚いた顔をする。

2人の視線が絡み合う。

神来斗の瞳から受け取った感情は、確信だった。

血の繋がりがないなんて関係はない。

今お互いが傍にいる事が当たり前で、手を取り酸いも甘いも乗り越えられる仲…それならば“家族”と言っても申し分ない関係でその言い回しが似合うのだ。

神来斗の気持ちを汲み上げる事が出来た輝咲は笑顔を戻した。


「…何かしら、勿論初めからの評価から変わってはないけど、一風変わった人…あの話を聞いた上で“妹”なんて。」


「俺は人の嘘や感情を見抜く力は誰にも負けない、町長として統率できる程にはね。きっと君だって同じ事を思っていたはずさ。…嫌だったか?」


「…いえ、誇らしい気持ちだわ。」


目を伏せて安堵を混ぜた笑顔の彼女。

神来斗は口からまろび出そうな違和感や疑問を押し殺し、今はこれでいいんだと心を沈めた。


「ごめんな、色々話させて。嬉しかったよ。」


「こちらこそよ、貴方に聞いて貰えて良かったわ。」


笑顔を向けて紅茶を口に含む。

陶器が重なる音が耳に心地良く響き、随分解けた空気がまた空間を染め上げる。

聞きたい事や言いたい事、それがどんなに押し寄せ固く結んだ口から零れ落ちそうになろうと全て言うのは愚行だ。

どんな時も相手には心がある、穏便に打ち解けるには“話す知識”と“話さない品性”が何よりも効果的である。


「良ければ紅茶、もう1杯如何かしら?」


「ありがとう、頂くよ。」


「…ふふ。」


「…?どうかしたか?」


「いえ…果音以外の人とお茶出来ることなんてないから、なんだかとっても嬉しいの。やっぱり果音もご一緒すれば良かったのに。」


「ありがとう、そしたら申し訳ないが果音の予定が終わったら声を掛けてきてもらってもいいか?」


「あら勿論よ、お気遣い感謝するわ。」


彼女達が先程襲撃してきた男達をどうしたのかは想像に難くないし、彼女達の過去起こしたであろう事も察しが付く。

決して安全な人物ではないのは理解している。

しかし、どうも気になる。

彼女達の振る舞いやこれまでの行動、明らかに“人”を理解している。

今まで外界との接触をあまりしていなかったのであれば、人間の狡猾な善悪の使い分けを一見で判断できるはずがない。

今までの事が許される訳では無い…しかし、これからを変える事はできるはずだ。

この事件の解決の鍵になる行動は「交渉」にあるだろう。

神来斗の中に確信が徐々に構築されていく。


「…なぁ、変な事聞いてもいいか?」


「?何かしら。」


「俺さ、君達に聞きたい事とか知りたい事がいっぱいあるんだ。…でも、今聞くつもりはさらさらない。」


「え?」


「だからさ、ゆっくりでいいんだ。これから君達の事、“俺達”に教えてくれないか?」


輝咲の顔が驚きの顔から見る見る頬が赤く染まっていく。

神来斗の言葉に込められた意味がちゃんと通じたようだ、輝咲にそっと微笑んだ。


「…貴方、まさかよね?…本気で言ってるの?」


「あぁ。ただ、一つだけ約束して欲しい事がある。」


「何かしら?」


「今後、君達の事を凛冬にも話したい。しかしあいつは良くも悪くも“一般人”だ。だから…」


神来斗が扉の方を指さした。

その先には輝咲が背負っていた大剣が暖炉の火の影になりながらずっしりと存在感を放っていた。


「武器になるものは隠して、暫くの間は使わないでいて欲しい。そうするだけで凛冬も、君達の事をすぐに受け入れられるはずだ。…どうかな?」


「…成程ね。」


その提案に少し間が空いた。

考えてからそっと目を伏せ、また沈黙が2人を包んだ。

神来斗はただじっと笑顔のまま輝咲の顔色に注視する。


「貴方、私達がどんな時間を過ごして来ていたか…大方予想が付いているんじゃない?」


「あぁ。確証はないが、確信はしているよ。」


悪戯な笑顔には、少しの警戒心とそれを上回る好奇心に似た喜びが込められていた。

きっと彼女は気付いているはずだ、神来斗の約束の中に「人を殺してはいけない」という意味が含まれている事を。

輝咲の笑顔に、揺らぎのない笑みで神来斗は続けた。


「ただ確信は他にある。君達の根本にあるものが、誰よりも寛大な“優しさ”だっていうのもね。…誰しも事情はある、だが互いに寄り添う事は出来るだろ?」


「お人好しも良い所ね、貴方って。」


「それが俺のチャームポイントでね。」


「…くっ、ふふふ、本当に変わった人。」


即座の切り返しに輝咲は息を吹き出した。

暫く考える様な素振りの後に、諦めたような笑顔を向ける。


「…いいわ、ただ護身でもあるから長期間手放す事は出来ないわよ。猶予は1ヶ月前後…といった所かしらね。」


「あぁいいぜ、交渉成立…だな?」


「期間の延期は受け付けないわよ。」


ふっと微笑んだ彼女の顔、安堵と同時にどこか愛おしそうな眼差しに釣られて心の緊張が緩む。

輝咲が暖炉の光を浴び、ミステリアスな空気に包まれている。

神来斗の頭の中は質問が波のように押し寄せていた…聞きたい事、言いたい事は山程ある。

しかしそれよりも…目の前にいる彼女の美貌に目を奪われて頬が熱を持つ。

輝咲はティーカップの取ってに細い指を添えた、長いまつ毛が輝咲の瞳を隠す。


「…そんなに緊張しなくていいのよ?」


「えっ?あ、あぁ…ありがとう。」


不意に声をかけられ思わず目を逸らす。

輝咲は微笑の後紅茶を一口飲む、ティーカップが揺れる程桜の甘い香りが神来斗の嗅覚を優しく刺激する。


「…随分香り高いな、この紅茶。」


「あら、ありがとう。果音が考えたフレーバーの紅茶なの、良かったら召し上がって。」


「あぁ、頂戴するよ。」


ティーカップを手に取り軽く揺する。

中には桜の花一輪がゆらゆらと遊泳している、夕焼け色の紅茶を一度口に含むと芳醇で優しくも存在感のある甘さが喉の奥まで広がった。

思わず溜息が零れると同時に身体がほんのり熱を帯び、酷く疲れた体を内側から癒してくれた。


「美味い…今まで飲んだものでも類を見ない位美味いよ。この味、きっと凛冬も絶賛すると思う。」


「あら嬉しいお言葉、果音に伝えておくわ。果音は調合が誰よりも得意だから。」


輝咲は目を三日月のように細めて笑う。

いつの間に収納したのか、気付けば何も無かったように彼女の背中から羽が消えていた。

恐らく、彼女達は件の吸血鬼と見て間違いないだろう。

本来あまり落ち着けるような境遇ではないのだが、彼女達の手厚いもてなしと気持ちに神来斗は違和感を抱きつつ、今は憩いの空気に甘んじる事にしていた。

果音の事を褒められご機嫌な輝咲にそっと笑みを返し、少し間を開けてから口を開いた。


「…なぁ、聞いてもいいか?」


「何かしら?」


「さっきの事…君の持つ羽といい果音の魔法といい…君達は何者なんだ?とても悪い人には思えない…君達の事が知りたいんだ。」


笑顔の問いかけに輝咲は目を瞬かせた。

思い出したかのように息を吹き、眉を八の字に笑ってくれた。


「ふふふ…あは、私達を怖がらない時点でおかしな人だと思ってたけど…私達の事を知りたいの?本当に変わった人ね。」


「え…そ、そんなに変か…?」


「いえ、ごめんなさいね。私達はあまり相容れるために外界との接触をしないから珍しくって。大半が怖がるものだから貴方のような対応はそうそうされないのよ?」


「そ、そうなのか…。」


コロコロと笑う輝咲の表情とは反対に、少し悲しさが見え隠れする言葉に神来斗は返答に詰まる。

一通り笑ったあと、輝咲は一息ついてカップの中の紅茶を見つめた。


「必然よ。人は“異変”に敏感なの、だからこそこの生物競争を生き残ってこれたんですもの。多数と違う者は淘汰される…いえ、淘汰なんて綺麗にまとめられるものではないけれど。」


「…昔から、そんな扱いを受けていたのか?」


「えぇ。…そんな悲しそうにしないで頂戴、もうとっくのとうに割り切ってるし慣れてるわ。」


目を伏せて口角を上げる輝咲の顔は、言葉に乗った悲しみを塞ぎ込んでいるようにも思えた。

思わず口を噤んだ神来斗を、輝咲は困ったような笑顔で宥める。


「貴方は優しいのね、でも大丈夫よ。もっとポジティブな話をしましょう、折角のお客様を嫌な気持ちにさせたくないわ。」


「…気にしないでくれ、俺が君達の事を知りたいって言ったんだ。話してくれてありがとうな。」


何とか作った笑顔の仮面は、やはり窮屈に感じる。

自分の統率する町にまだこんな悲しみを背負った人がいて、しかも今まで気付いていなかったという真実に心に針が刺さる感覚が走る。

頭の中にフラッシュバックした記憶は彼女の感情に敏感に反応し、神来斗の心を更に苦しめた。


「…そういえば。」


「ん?」


「さっき貴方、ここに地下があるのか気にしていたけれど…何か気になる事でもあったの?」


輝咲の言葉にハッとして先程の思考が頭に戻る。

しかし彼女達に話していいものだろうかと自制心が湧く、彼女達の住む家に昔こんなことが起きたかもしれないなどと言う必要はないだろう。

ましてや今は管理していた富豪が息絶え真相なんて分かるわけがない。

ならば下手にそんな憶測を話さくても良いだろう。


「あぁいや…これと言って何か気になる訳では無いよ。地下までありそうな位デカイな〜って思ってただけだ。」


「そう?でも大きいのは同感だけれどね。お部屋がいくつも余っているから、毎回掃除が大変なの。」


傍から見れば一軒家を4つ組み合わせても足りない程の規模だ、それを二人で管理するとなると相当な労力であることは想像に固くない。


「確かにここを二人で管理か…きついな。いつからここに住んでいるんだ?」


神来斗の問いかけに一瞬の間ができた。

輝咲の小指が小さく1回反応するのを神来斗は見逃さなかった。

不自然な間を開けて、足の上で上品に手を交差してそっと置く。


「…そうねぇ、産まれた時からかしらね。」


「…え?」


神来斗は思わず目を丸くした。

その反応を楽しむように悪戯な笑顔を向ける。


「だって…私の家ですもの。」





《to be continued…》

次週、2025年7月19日(土曜日・夜頃)

毎週土曜日 投稿予定


作者

アロア・レイス

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https://x.com/aroa_reisu_art?t=-Bs9CRvsgT_4hxvv3sIc7Q&s=09


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承っております。



前回⬇⬇⬇⬇⬇

輝咲達に介抱されながら、森の奥にある館へと訪れた。

神来斗は輝咲を横目で見る、彼女が背負ってる凛冬は未だぐったりと意識を手放したままだった。


「ここまですまないな、俺が凛冬を抱えられる程怪我が軽ければ…。」


「これくらいどうって事ないわ、私は果音のように魔術を液体とか物に詰める事は出来ないけど、体に溜め込んで筋力のステータスに振る事ができるの。今の彼、うずらの雛みたいに軽いわ。」


「き、君肉体強化ができるのか…どうりであの大剣を片手で持てる訳だ。」


神来斗は先程の光景を思い返し、引っ込んでいた違和感が腑に落ちる。

館の門を開けると、手入れの良く行き届いた綺麗な庭に出た。

噴水を囲うように美しい花々や作物が咲き誇っている。

館の敷地内に足を踏み込むと、神来斗の周りを囲っていた光が溶けるように消えていった。


「あれ…光が…」 


「大丈夫!このお家は周りに私のお薬で膜を張ってるの、だから光が見えなくてもお家に入ればちゃんと傷は治るよ!」


「そうなのか、凄いな…。って言うか、広いなぁ…ここ、2人だけで管理を?」


「えぇ、私達の畑のようなものよ。食料は全てこの庭か森の中で作ってるの。」


「全部!?すげぇ…自給自足してるのか…。」


「お姉ちゃんと一緒に育てたお花で作る紅茶、とっても美味しいんだよ!果音淹れてくる!」


果音はそう言うと3人を置いて嬉しそうに館の中へと駆けて行った、余程客人が珍しいのか嬉しいのか、走り去る音に混じる鼻歌は甲高く少々音を外している。

輝咲がその背中を幸せそうに見つめる…彼女達は人ではない、だがこの様子は自他共に認める幸せな家族と何ら変わりは見つけられなかった。

ただ少し、“人と違う”だけ。

神来斗は辿り着いた結論に一瞬胸をざわつかせた。


「客室へ案内するわ、凛冬さんは寝室にお運びするわね。」


「ありがとう、助かるよ。」


輝咲からの気遣いに笑顔を送る。

館の中は思ったよりも綺麗で上品な彩りで神来斗達を迎えてくれた。

繊細な花と甘いバニラのような香りに包まれ、心が解ける安心感を覚えた。

客室はワインレッドと淡いオレンジに染まったアンティーク調のものだった。

果音が付けてくれたのか、暖炉には軽い音を立てながら暖炉に火が炊かれている。


「ここで待ってて頂戴。すぐ戻るけれど、待っている間はこの部屋を好きにしてて構わないわ。」


「ありがとう、そうするよ。」


輝咲が凛冬を背負い部屋を後にする。

2人を見送ると、神来斗は部屋の中を見回した。

ソファに机、棚などが置かれている…どの家具を見ても普通に暮らしていても手に入れられないほど高価な物に見え、所々花の模様が施された箇所が見受けられた。

恐らく、全てオーダーメイドなのだろう。



「流石金持ちが建てた家だな…。」


持て余すほどの金を持っていたのだろう、森全体を買収していたのだから維持費だってかなりかかったに違いない。

この家で暮らす予定だった人物は、相当優遇されていたのだろう。

その時神来斗に、1つの疑問が浮かんだ。

…この家はこんな森の奥に、何の為に立てられたのだろうか?

辺りの豪華な家具や細かい模様が施された内装、使用するのは富豪の血族に当たる者だろう…執事やメイドの為という訳ではないだろう。

富豪の気分転換か?それにしてはあまりにも交通に不便な場所過ぎないか?

この建物が建てられたのは夫人が流産してしまった頃…流産したのは、“事故”だと記載と共にこの別荘への地図が書かれていた。


「ここは…夫婦とその子供の為に建てられたのか?」


こんな森の、しかも木漏れ日も許さない程の奥に?

しかし子供とは富豪や貴族にとって、一、二を争う大切な跡継ぎだ。

侵入者や敵が来にくく、安全地帯と言えばそうだろう…とにかく人の目に当てたくなかったのだろう。

…子供が流産したのなら、立ち入りを禁じた理由は?

入口が森全体を囲うように塞がれてたのなら館の管理なんて出来ない、人も来れないようなら売ってしまった方が無駄金を叩かなくて良いだろう。

しかしそれをしなかった…富豪にとって必要なものだった…。

つまり使われていた事は確かだろう。

だが誰が、どうやって使っていたのか?

この森から入ることが出来ないなら…あの崖?

いや不可能だ、人が落ちたら一溜りもない場所だったしハシゴがかかっていた形跡なども何も無かった。


「…どこかに、富豪達だけが知っていた別ルートがある…。」


出入りした痕跡がないあの崖が入口な訳が無い、子供達が仮にここを使う予定だったのならあそこからは危険過ぎるし、他に分かりやすい場所に入口を作るとは到底考えられない。

かと言って飛行機やヘリコプターを使って上から入ろうものなら返って目立ってしまう…どこかに人目の付かない秘密のルートが存在するはずだろう。

となれば、もしかして…。


「……ここには、地下はあるのか?」


「あるわよ。」


唐突に届く返答に、神来斗は肩を上げた。

振り返ると、輝咲が腕を組みながら壁に寄りかかっていた。


「何か考え事かしら?」


「あ…あぁ、いや。少しな…。」


神来斗は微笑みを浮かべる輝咲に、慌てて笑顔を見せる。

恐らく輝咲達がこの館に来たのは事件の後だろう、彼女達にこの館の歴史を聞いた所で困り顔を拝むだけだ。

思考を止めて頬を指で掻く、すると輝咲の後ろから果音がパタパタと音を立て部屋に顔を覗かせた。


「お待たせ〜!遅くなっちゃってごめんね…はい、お茶とお菓子!」


果音が持つお盆には、優しい香りをベールのように浮かべた紅茶と磨きたてのルビーのような鮮やかなジャムが乗せられたクッキーが2人分盛られていた。


「ありがとう果音、手間かけさせちゃったわね。」


「ううん、全然!えっとお名前…神来斗くん?の、お口に合えばいいんだけど…。」


「あぁ、名前は好きに呼んでくれ。有難く頂くよ。」


「あら、果音。2人分しかないようだけれど…?」


「えへへ…果音、実はつまみ食いしちゃって…。果音はお腹いっぱいになっちゃった…。」


照れたように片手を頭の後ろに回す。

顔を合わせた時から思っていたが、成長した体に見合わず少し子供っぽい所があるようだ…可愛らしくて良いとは思うが。

果音の回答に輝咲は困ったような笑顔を見せ、果音の頭を撫でる。


「もう、ダメじゃない果音。それならお茶だけにしておく?」


「ううん、果音お片付けと…えとえと、凛冬くん!の、看病してくる!」


「あらありがとう、いつもお利口さんで助かるわ、お願いね。」


「!果音偉い!?わあぁ嬉しい〜!いってきまぁす!」


(…い、一瞬果音に耳と尻尾が見えた気がしたな…。)


果音は褒め言葉に目を輝かせ、張り切ったように駆け出して行った。

その様子はまるでゴールデンレトリバーとその飼い主だ、単純で真っ直ぐな性格なのだろう。

…しかし、そのまま行ってしまった。


「か、果音ちょっと!お茶菓子も持っていっちゃってるわよ!?」


「あっ!?間違えたぁ!!」


通路から果音の大声が聞こえ、すぐに戻ってきて机にお盆を置いた。

本当に犬のようで神来斗は思わず笑みが溢れ、口元に手をかざして笑っている事を咳で誤魔化す。

それに気付いた果音が恥ずかしそうに頬に手を当てる。


「え、えへへ…果音ちょっとおっちょこちょいなのぉ…。」


「あぁ…ふふ、大丈夫だ、気にしてないさ。」


「えへへ…ご、ごゆっくり!」


本人としては恥ずかしかったのか、顔を赤くして部屋を後にする果音。

見送り片手間に扉を閉じながら、輝咲が咳払いをし壁に大剣を立て掛けてから神来斗に向き直る。


「ごめんなさいね、少しバタバタしてしまって。」


「気にしてないよ、ありがとう。」


2人は改めて向かい合って机を挟み腰掛ける。





《to be continued…》

次週、2025年7月5日(土曜日・夜頃)

毎週土曜日 投稿予定


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アロア・レイス

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前回⬇⬇⬇⬇⬇



_…視界には懐かしい景色、その後ろから草原を走る音が聞こえてきた。

振り向くと、泥んこになった幼い凛冬が大粒の涙を流しながら駆け寄ってきていた。


「ヒック…お兄ちゃん…お兄ちゃぁん…えぇぇん…」


「どうした凛冬、泥だらけじゃんか。」


「うぅっ…えぇぇん…こお、転んだぁ…ヒック…痛いよぉ…」


そう言いながら凛冬は手の平を差し出す。

泥に塗れた手には皮が小さく捲れ、じんわりと血が滲んでいた。

それを見て、微笑みを浮かべて凛冬をそっと抱き締めた。


「大丈夫だ、凛冬。痛くない、痛くない。」


背中を擦りながら、もう片方の手で頭をポンポンと撫でる。

温もりで少しだけ泣き止み、ひゃっくりと鼻をすする音が腕の中から聞こえる。

震える肩を押さえるように、自身の頭の力を預けた。


「もう大丈夫、お兄ちゃんがついてるから。」


「ヒック…うん…うん…」


凛冬は語り掛けた言葉に必死に頷く。

…昔は、気持ちに素直で甘えん坊だったな…どうしようもなく可愛くて、ついつい甘やかしてしまっていた。

…ごめん…ごめんな、凛冬。

“こんな事”になるなんて、思ってなかった…。

“こんな事”に、したくなかったのに…。

心の中に後悔の波が押し寄せてくる、届くはずのない懺悔を繰り返し呟いていた。


「ごめん…ごめんな…。…本当に、ごめんな…。」


段々と意識が遠のいていく。

1人にさせてしまった…でも、これで良かったんだ。

凛冬にとって、俺は“傍に居てはいけない”存在なのだから。

大丈夫、後は運命が上手くやってくれる。

お前を襲った奴らは、時期に死ぬだろう。

安心していい…俺は、死んでも、お前を…守るから…。

だから…安心…し、て…

大…丈、夫…


凛…冬…







耳に風の音が流れ込んでくる。

桜に混じったカモミールティーの様な甘い香り…。

それは神来斗の重たい瞼を開かせるには十分だった。


「…ん……ぅ…ん」


意識がゆっくりと呼び戻される。

徐々に視界に彩りが戻り、頭が処理を始めた。

周りをカーテンのように包み込むキャラメル色の長い髪は、一部だけベリーのような赤みを帯びている。

シルクのような美しい肌は月明かりを遮られていても美しさを損なわない。

サファイアのような青い瞳は不安と静寂を纏い揺れていた。

身体の内は鈍痛を感じてるのに、それを包み込む様な包容力のある温かな感覚。

桜の花弁が風と共に舞い、月明かりを時々反射しながら優しく降り注ぐ。


(嗚呼…綺麗な光景だ…美しいなぁ…。…もしかして、こんな俺に来たお迎えが…天使だったのか…?)


力の抜けた顔で、神来斗はゆっくりと瞬きをする。

そうか…俺は、さっき…

崖から落ちて…黒い影に、ぶつかって…

…ん?

俺は…死んだ…?

いや、攻撃された箇所は鈍痛がする…生きてる?

俺は今…何をしているんだ?

俺は…

女性に…抱えられている…。

さっき…鳥のようなものにぶつかった後…体が舞い上がって…

崖の上に…戻って…

………ん?女性?

そこまで思考が回ったところで、開閉を繰り返していた瞼が徐々にしっかりと開く。

思考が目覚めろと叱責するように、最短で結論を叩き出した。

…息がかかるほどの位置に、見知らぬ、美しい女性の顔が、ある。

2人の視線が絡み合う。


「…え……え?…えっえぇうわあわあっわぁぁぁぁっ!!?」


「きゃぁ!?」


想像もしていなかった光景に、神来斗は思わず暴れて女性の腕の中から逃げるように転がった。

情けない声を上げながら暴れ出した神来斗に驚いて、女性は尻餅をついた。

彼女の瞳が困惑に染まり、瞬かせながら不思議そうに神来斗を見つめていた。

神来斗は先程までの状況を頭の中で整理した。

女性らしい香りと肩に触れていた低反発な感触が想起され、神来斗の顔は火をつけた様に熱を持つ。


「す、すす、すまない!!ここ、こ、これはその、わ、わざとじゃなくて!その〜…!!」


「…?」


神来斗の大袈裟な慌て様に彼女は首を傾げた。

彼女の反応に神来斗は徐々に気まずさを覚える。

そよ風に吹かれる彼女の髪は、桜の良く似合う奥ゆかさを漂わせている。

改めて彼女の姿を見直す。

今まで類を見ないような艶やかさに、触れたら壊れてしまいそうな繊細なベールを纏っている。

神来斗は思わず目を逸らした。

顔の火照りは一向に引かず、心臓が早鐘を打ち暴れ回る。

次第に全身が熱を帯び、汗が溢れ出し瞳が揺れる。



(お、落ち着け俺〜っ!!一旦深呼吸…し、深呼吸のやり方ってどうだったっけ…!?まずい何だ何でこんなに心臓が跳ねるんだよ…っ!!)


無意識に土に触れている手が土を握る。

冷たい感触を覚える、ようやく深呼吸位は出来るようにはなってきた。

草と土が擦り合わさる音に遅れて気付く。

彼女のいた方を見ると、離れていたはずの彼女の顔が目の前にある。

反応する間もなく、彼女の手の平が神来斗の額に温もりを分けていた。


「…貴方…大丈夫?やっぱ具合悪い?」


「……〜ッ!?!?」


握ったはずの土がまるで焼石のように感じた。

飛び出さんばかりに跳ねた心臓は、身体中の鈍痛を忘れさせるには十分だった。

神来斗は後方に高速で下がる。

この歳になって赤ん坊のように後ろ向きへ後退することになるとは思わなかった、そんな下らない一瞬の思考は綿飴を水に入れて消してしまうよりも早かった。


「いいいいいえいえいえいえ元気っ!!全然元気!!大丈夫っ!!ちょちょっと何が何だか分かってなくて、た、頼むからちょっと時間をくれ!!」


「は、はぁ…。」


バグとも言える神来斗の態度にたじろぐ彼女。

その時、彼女の背後で黒いものが小さく動いたのが視界の端に見えた。

瞬間迷子になっていた冷静さは豪速球で神来斗の頭の中に飛び込んできた。

小さく畳まれてはいるが、それでも迫力を帯びた黒い蝙蝠の羽。

月明かりに照らされた薄膜は儚げな紫の光を持っていた。

身体が急激に冷える、冷えた頭は警戒心と未知の恐怖を打ち鳴らす。


「…え…羽…?」


彼女は神来斗の問いかけに無言を貫く。

コスプレなんかでは無い…薄く透けた飛膜からは血管が見え、犬の尻尾のように彼女の感情と連動しているのか時折パタパタと動くのがいい証拠だ。

神来斗の脳裏に想起される、吸血鬼事件の目撃者が口にした「吸血鬼を見た」という言葉。

まさか…あの事件の…いやしかし、こんな華奢な女性がそうだと言うのか…?

信じ難い憶測は、目の前の現実が奇しくも立証している。


「まさか…そんなはずは、君は…まさか、吸血鬼…?」


「…1つ、安心して。別に貴方を殺したり、捕って食べようなんて考えていないから。」


神来斗の反応は珍しくないのか、溜息を吐き立ち上がる。

服に付いた土を払い腰に手を当てる、腰まではある長い髪を風が救うように揺らした。

彼女の美しさと異様な物体は混在し、ミステリアスな空間を創り上げていた。


「貴方、この崖から落とされてたのよ。間一髪、間に合ったわ。…無事で何よりだわ。」


安堵と不安の入り交じる彼女の笑顔に、神来斗は自身の第六感が落ち着くのを感じた。

初めての光景に声を失う。

しかし、何か話さなければ。

咄嗟に思考が絞り出した事に、神来斗は途切れ途切れに唇を動かした。


「…た、助けて、くれたのか…?」


神来斗の問いかけに、彼女は少し考えた。


「…そう思ってくれるなら良かったわ。…さ、動けるようになったらすぐにお帰りなさい。そして私達の事は忘れなさい。」


「え…?どういう…っ!」


神来斗の質問を遮るように目の前に突きつけられた大剣。

目の前を通り過ぎる風に鉄塊の迫力、それを軽々と振り薙ぐ彼女の姿に出かかった言葉が違和感と共に喉の奥へと引っ込んだ。

よく見ると、鈍い灰色と共に赤黒い液体が光を反射していた。

神来斗は息を飲む。

さっきまでの浮ついた気持ちが吹き飛び、先程までの状況がフラッシュバックする。

そうだ、まだ確認してない大事な事がある。


「…人助けをしているつもりなんてないの…私達はただ、ルールに則って私達の目的の為にしか行動はしない。…ルールに従っただけよ。」


彼女の青い瞳が刹那に光を散らす。

冷たい表情からは、どこか寂しげな空気を纏っているように感じ取れた。

瞳を揺らし硬直している神来斗に、彼女は溜息を吐き目を伏せる。


「…いい?分かったら今日の事は素直に忘れ…っ!」


その時、彼女の手を神来斗が取る。

未だ嘗てない反応に、肩が跳ねる。

いつの間に立ち上がったのか彼女には分からなかった。

剣は彼女の手を抜け、大きな音と共に地面へ激突する。

神来斗に握られた手は驚きのあまり胸部の方へと引き寄せる、2人の身体が近付いた時神来斗のもう片方の手は彼女を逃がさまいと肩を掴む。


「きゃっ!?ちょ、ちょっと…」


「答えてくれ。」


取り乱した彼女を律する神来斗の低く呟く様な声に身体の力が抜けていく。

徐々に神来斗の手に力が篭もり彼女の肉体に痛みが走る。

ゆっくりと神来斗の目を見ると、目の光は消え失せ一触即発の黒いオーラを纏っていた。


「…俺は今、時間をくれたお陰でいくらか冷静になれた。だからこそ、今周りを見回す勇気がない。」


「?何言って…」


「俺の質問に…端的に答えてくれ。……さっき、“何人”殺った?」


「…」


彼女の背筋に寒気が走る。

今まで見てきた人間とはまるで違う、常軌を逸したオーラと実力。

この男…只者では無い、やはり私達と…“同じ”。

彼女の第六感が全身の血を騒がせた。

一歩間違えれば、戦闘は免れないだろう。

しかし下手な嘘は逆効果だということも嫌でも分かる…だが、大丈夫。


「…はぁ。」


彼女は一息ついた。

そう、冷静に”あの状況”を整えた時…今彼の頭にある最悪解が出ることはないだろう。

今にも骨を折ってしまいそうな神来斗の手、彼女は痛みに拳を握る。


「…3人よ。」


「…白髪の」


「先に言うわ。…無事よ。」


神来斗の言葉を遮り、視線を絡めながら彼女は断言した。

しばらくそのまま睨み合いが続いたが、その間徐々に神来斗の手から力が抜けていき最後には力無くぶら下がる。

黒いオーラが晴れ始め、不安に染まった瞳を揺らす。


「…本当、か?信じて、いいんだな…?」


「嘘を吐くメリットがないわ。」


解けた手の状態を確認して、彼女は森の方へと視線を移す。

視線の先から、草の上を駆ける音が聞こえてくる。


「お姉ちゃぁ〜ん!」


音の方から幼い女の子の声が聞こえ、思わず神来斗も視線を移す。

カフェオレ色の髪に、撫子のような色の瞳の少女。

自分よりも大きいものを背負っているからだろうか、踏ん張るその表情はさながら頬袋一杯にご飯を詰め込んだハムスターのようだ。

そして、背負われているのは…


「…っ!!凛冬っ!!」


自身の声を合図に体は凛冬の元へと駆け寄っていた。

神来斗が目の前に来ると、少女は凛冬を背負ったまま地面へうつ伏せに倒れ込む。


「むきゅぅ〜…もう限界ぃ…」


「あっ、お、おい君!?大丈夫かっ!?今避けるから…よっと。」


潰れてる少女を不憫に感じ凛冬を抱き抱えると、彼女がそっと少女を抱き起こす。

少女は疲労困憊といった感じで彼女の豊満な胸部に頭を預ける。

神来斗は凛冬の肩を揺すった。


「凛冬。おい、凛冬っ目を覚ませ!」


「大丈夫よ、気を失ってるだけ…いずれ目を覚ますわ。」


彼女は少女の頭を撫でながら優しく語りかけてくれた。

脈を測ってみても異常はない、外傷も…特に見当たらない。

正真正銘、無事だ。

その事実に、神来斗は全身の力が抜け尻餅をついた。


「良かったぁ…痛っ…!?…てぇ…」


その時神来斗の体のあちこちが急激に痛みを帯びた。

先程まではアドレナリンが分泌されていたのが、緊張がほぐれたため暴行で受けた傷が本来の感覚を取り戻してきたのだろう。

痛みに唸る神来斗に反応し、少女がパッと起き上がる。


「お兄ちゃん、大丈夫?痛いの?」


「あ、あぁありがとう、大丈夫だよ。」


「大丈夫!果音に任せて!」


花のような笑顔を神来斗に見せる。

少女は腰に付けたバックを開き地面へ広げた、鮮やかな水の入った小瓶がずらりと並んでおりアンティーク調の小瓶も相まって美しさを帯びていた。

少女は神来斗に両手を差し出す。


「お兄ちゃん、腕見せて!」


「え、あ、あぁ…ありがとう。」


神来斗は困惑しながら、汚れたジャケットを脱ぎ一旦左腕を差し出した。

少女はるんるんで神来斗の左腕のシャツを捲る。

左腕は神来斗の想像以上に内出血を起こしている、腫れ上がった傷を見ていると忘れていた痛みが嫌でも思い出された。

少女はバックから黄緑色に淡く輝く液体を取り出す。

コルクを開け、そっと神来斗の患部に垂らす。

液体は腕に付いた時、神来斗の周囲に薄緑色の光の玉を浮かべ始めた。

神来斗の身体を包み込むように光が付着すると、人肌程の温度を帯び痛みがじんわりと引いていく。


「す、すげぇ…まるで魔法みてぇだ…。」


「お兄ちゃん、酷い怪我だったんだね…可哀想。」


「傷の度合いが分かるのか?」


「うん!この薬はね、痛いところを光で覆って治していくの。でも切り傷くらいだったらすぐ治るのに、全然光が弱くならないもん。ちょっと治るまで時間がかかりそう…。」


「ありがとう、助かるよ。しかし…」


神来斗は2人を交互に見つめ、瞳を瞬かせる。

初めて見る“魔法”と言うのに相応しい光景に頭の整理が追いつかない。

現実離れした2人に、神来斗は警戒心よりも好奇心が勝っていた。


「君達は…一体…?本当に人なのか?」


神来斗の問い掛けに、2人は目を丸くした。

少女は言葉を理解しようとする犬のように首を傾げる。

その様子を見ていた彼女は、ふふっと思わず口元に手を当て笑ってしまう。


「貴方、これを見てもまだ私達が人間だと思っているの?」


「え…いや、だって…あんまりにも現実離れしてる、というか。魔法とか、羽がある人とか…まるで奇跡だ。…俺は、夢でも見ているのか…?」


「!…いいえ、これは現実よ。」


彼女は少し驚いた様子を見せるも優しい笑顔を取り戻す。

すっと立ち上がり、自身の服に着いた土を払うと少女の手を取り立ち上がらせ、少女の服に着いた土も一緒に払ってあげながら神来斗に語りかける。


「貴方が…いえ、貴方達が見て来た光景が全てじゃない。人間は自身にない“未知”や“少数派”を嫌うものよ。不可思議は存在する、ただその存在は限られているからこそなかなか遭遇しないし、知られないものなのよ。」


「不可思議…」


「でも不思議な人。大抵の人はこの“少数”に出会うと“恐怖”の対象として慄くもの。なのに貴方は…私達の存在に、“奇跡”と言えるのね。やっぱり見てて思ってたけど、貴方って本当に変な人。」


上品な笑みを見せ、眉を八の字に曲げる。

神来斗は心がキュッと握られる感覚を覚え、頬が赤くなり何となく目を逸らす。

そんな2人を交互に見つめ、少女はまたしても何も知らないと言った顔で首を傾げた。


「ねぇお姉ちゃん、このお兄ちゃん変な人なの?」


「えぇ、とっても。でもね果音、この人はとっても良い人よ。」


「ほぇ〜、お兄ちゃん変で良い人なの?」


「待ってくれ、語弊がある。」


神来斗は純粋に言葉を受け取る少女に困惑を見せる。

人差し指を下唇に当て不思議そうにする少女、彼女はそんな様子の少女の肩に手を添えて神来斗に微笑みかける。


「あら、違ったかしら?」


「…君達から見て俺はそんなにおかしいか?」


「えぇ、とっても。」


「とってもなのか…。」


「そんな渋い顔しないで頂戴、勿論良い意味よ。」


「…からかってるだろ。」


「あら、バレたかしら?」


彼女はまた笑う。

変に胸が締め付けられる感覚に戸惑いつつ、神来斗は口を尖らせた。


「…ねぇ貴方。もし良ければ傷が癒えるまで休んでいかれたら?私達の家は2人では広過ぎるから。」


「い、家…?森の中の館のことか?」


「えぇそうよ。」


その言葉を聞いて神来斗は苦笑いをする。

あの家の持ち主は2年前に死んだ大富豪のものだ、彼女達のもの…という訳では無いはずだが…。

しかしそれも人間としてのルール、もしかしたら人間では無い彼女達には関係ないのかもしれないと自己解決をする。


「…そ、そうか、ありがとう。まだ体も自力じゃ動きそうにない…体を光らせながら町を闊歩する訳にも行かないしな。折角ならお邪魔してもいいか?」


「歩く街灯みたいになっちゃうもんね〜。」


「改めて想像したら嫌すぎるな…。」


「ふふっ…。えぇ、是非ゆっくりしていって頂戴。」


「えっお姉ちゃんほんと!?わあぁ…っ!初めてのお客様だぁ!嬉しい〜!」


少女が目を輝かせて喜ぶ姿に微笑みを送り、彼女は神来斗に近付き手を差し伸べる。

風が吹き、桜吹雪がその場を優しく包み込む。


「私は輝咲。……夜桜 輝咲(よざくら きさき)よ。」


「私、果音(かのん)!宜しくね!」


「あぁ…俺は楠(くすのき) 神来斗、こいつは凛冬だ。宜しくな。」


神来斗は凛冬を支えながら輝咲の手を取った。

風が歓迎するように2人の間を取り巻いていき、月明かりは不思議な関係の4人を淡く包み込んでいた。






《to be continued…》

次週、2025年6月28日(土曜日・夜頃)

毎週土曜日 投稿予定


作者

アロア・レイス

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前回⬇⬇⬇⬇⬇


懐中電灯に反射される木の肌質以外は暗闇が包んでいた。

今日は晴れで満月、月明かりの柱が淡く導いてくれる事を期待していたが、忘れ去られた森は全てを拒んでいた。

あまりにも閉鎖的で静寂に包まれた世界に、思わず神来斗も身震いする。


「こ…れは、想定以上だな…。」


「い、いいから、早く行きましょう…立ち往生してても何も変わりません。」


凛冬の言葉に背中を押され、木々の隙間を抜けていく。

所持していたコンパスと、入口の際の方向感覚を頼りに進む。

しかしいくら進んでも、景色が変わることはない世界に神来斗達の心からは余裕がこぼれ落ちていく。

地図には約30分程真っ直ぐ進んだところに別荘があると記載はあるが、徒歩なのか車なのかの記載はない。

車が入れる隙が見当たらないため、せめてもの希望を持って歩みを進める。

大きく成長した木の根が凛冬の足をすくい、枯葉が一気に潰れる音が聞こえた。


「うわっ!?」


「!凛冬、大丈夫か?」


「えぇ。…随分と荒れた道ですね。」


「離れるなよ、ここら辺殆ど歩きにくい道になってる。」


ただひたすらに獣道を辿る。

奥まで来たのか、甲高い風の音は低く唸るような重低音と共に過ぎ去っていた。

懐中電灯を握る手に冷や汗が滲む。

じっとりと嫌な汗をかきながら、事件の解決を望みに1歩ずつ歩みを進めていく。




…幾分か経っただろうか、時間の感覚がまるで分からない。

何時間にも感じられる長い道のり、足は段々と痛みを帯びてきた。

土の擦れる音、落ち葉が砕ける音が耳障りに感じてくる。

極度の緊張感に呑まれ、精神が削れ始めた頃。

足に当たる感覚が硬いものを覚えた。


「ん…?…石畳、か?」


「ここから舗装されていますね。別荘が近いのかもしれません。もう少しですね。」


「やっと進展かぁ〜長かったぁ〜。気合い入れて行くか!」


溜息混じりの喜びに、精神が正常を保つことが出来た。

石畳を辿り歩みを進めると、徐々に月明かりの柱が降り始めた。

唸るような音は晴れ、ザワザワと木々が歌い始める。

その時だった。

しばらく歩いた後突然、神来斗が歩みを止めた。

辺りを見回していた凛冬は気付かずに神来斗の背中にぶつかった。


「わっ、すみません。どうかしたんですか?」


「…これか。」


神来斗の視線の先には、アンティーク調の見事な館が静かに佇んでいた。

鉄格子の扉には蔦が絡み、草が手招きをするように揺れている。

青白い月明かりに照らされた館は幻想的な空気を纏い、暗闇が守っていた光景に思わず感嘆の息が漏れる。


「すごい…こんな、美しい別荘がこの町にあっただなんて。」


「今まで見つかっていなかったにしては、外装が保たれている…人の出入りはありそうだな。」


神来斗達は暫く身動きが取れない程、幻想的な空気に見惚れていた。

ザアッと草木が揺れた音と風圧にはっとし、神来斗達は我に返った。


「兄さん、中に入ってみますか?」


「待て、さっき言っただろ。人の出入りがあるかもしれないから、まずは周りから探索しよう。」


「分かりました。…そういえば兄さん、あれ見てください。」


凛冬が振り返り指を指す。

その先は暗闇への道だが、視線を落とすと石畳から枝分かれするように地面が踏み固められていた。

よく使う道なのだろう、石畳はなくとも草は綺麗にその場を避けて育っている。


「これは…先にこの道の先を確認しよう。」


「はい。」


2人は再度暗闇へと足を踏み入れた。

先程までの道とは打って代わり、木漏れ日が点々と足元を照らしてくれている。

歩いて5分も掛からないうちに、視界の先が開けていた。

足早にかつ慎重に森を抜けると、潮風が神来斗達を包み込んだ。


「うわっ。…!」


突然の突風に怯んだが、目を開けた瞬間の光景に思わず固まってしまう。

出た先は一軒家が2件ほどは建てられる位の広場を持った崖だった。

雲一つない紺桔梗色の空を覆い尽くす程の星々が儚げに輝いている。

月明かりに照らされた海は波を立てながら揺れている。

潮風に揺られる草はまるで踊っているようにも見えた。

突然視界の一部が遮られ、見上げると崖を守るように桜が咲き乱れていた。

ザアッと涼しい音を立てると、桜の奥ゆかしい香りと共にそぼ降る雨のように花弁を散らしている。

自然が淘汰する美しさに眩しささえ感じてしまう。


「すげぇ…綺麗だ。」


「こんな所があったとは…知りませんでした。」


ゆっくりと歩みを進め崖側に近づいていく。

辺りを見回しても人工的なものは何一つとしてない、人の立ち入りがあると思えない程生き生きと伸びる草に、成果を感じられず沈む心はどこかに吹き飛んでしまった。

崖下を覗いても、波を受ける岩肌が月明かりを反射して輝くだけだった。


「…どうやらここは見当違いの場所だな。」


「その様ですね。しかし疲れた心にはいい栄養になりましたね。」


「ほんとにな。出来る事なら、ここには毎日通いたい位だよ。」


「同感です。持ち主が存命だったら、他の人も来れるようなスポットとして交渉してしまいたいほどです。」


別荘に向かおうとする足とは反対に、目はその景色からは離れてくれなかった。

凛冬が名残惜しそうに辺りを見回しながら森の入口へと戻っていく。


「さぁ兄さん、早く戻りましょう。時間はありません。」


「あぁ、そうだな…。」


神来斗は後ろ髪を引かれる気持ちを抑え、凛冬に目線を移す。

後ろから凛冬を覆ってしまいそうな暗闇への道、しかし先程までの精神的苦痛はない。

何故か神来斗の心には、ここを進めば真実に近付ける…そんな確証のない確信が湧いていたからだ。

凛冬が足先を神来斗に向ける。


「兄さん、早く行きましょう。もし犯人がいたら…」


凛冬がそう言いかけた頃だった。

暗闇から突然凛冬へ向かい伸びる手、片手には布切れのような物が握られている。

一瞬にして神来斗は全身の毛が逆立つ言い様のない負の感情に苛まれた。

頭が状況を整理する間もなく、神来斗は声を荒げた。


「凛冬逃げろっ!!」


「えっ…ん"ぅっ!?」


気味の悪い手は獲物に喰らい付く蛇のような俊敏さで凛冬の首に纏わり付く。

反射的に解こうとする両手、その上に覆い被さるように凛冬の口元に布切れが押し当てられる。

抵抗の音を立てながら凛冬の体が闇に消える。

咄嗟に追いかけようとした体は3歩駆け出した所でピタリと止まった。

暗闇から高身長の男が姿を現した。

既に勝ち誇った様な顔で腕を組み、ギラつく目で神来斗を見下していた。

その後ろから着いてくるように男2人が同時に姿を見せる。

左側の筋肉質な男の腕には、腕をだらんと垂らし無抵抗の凛冬が雑に抱えられていた。


「ようやく隙を見せたか、ヒーローの町長さん。」


「…なんだ、テメェら。」


臨戦態勢に入り護身用のナイフを構える神来斗を、高身長の男は鼻で笑い飛ばした。


「うちのもんがお世話になってな、今日は初めてお縄に着いたみてぇなんだ…可愛がってもらったお返しに来たんだよ。」


神来斗の脳裏に今日逮捕した男の姿が過ぎった。

どうやら仲間に見られていたようだ、逆恨みに後を付けてきていたらしい。


「それでコソコソ俺達をつけてきてたのか…どうりで陰気臭い奴らだ。」


神来斗の煽り文句に高身長の男の眉間に皺が寄る。

しかしすぐに笑みを浮かべ、凛冬の髪を鷲掴みにする。

その瞬間、神来斗の殺気が男達を電光石火の如く貫いた。

思わず後ろの2人はたじろぐ隙を見せる。


「…その汚ねぇ手を、離せ…今、すぐに。」


「安心しろって町長さんよぉ…俺は何もこの白髪野郎に興味はねぇんだ…。」


「何だと…?」


神来斗の額を通る血管が、傍から見ても分かるほどに膨張する。

悪戯な目を神来斗にぶつけながら、高身長の男は神来斗を指さした。


「俺が用があんのは…あんただ。」


「ほう、それで交渉のつもりか?」


「勘違いするなよ、今お前に決定権は無い。交渉…?そんないちいちだるい事する訳ねぇだろ。」


そう言いながら腕を捲りながら神来斗に近付いていく。

神来斗の足元の土が擦れて音を立てる。

その瞬間に筋肉質の男が凛冬の頭に懐から取り出した拳銃を押し付けた。

事態の悪化に神来斗の手に力が籠る。


「俺はな、俺の仲間を可愛がってくれた奴には何倍にもして返すようにしてんだ。だがおめぇは、速さも強さも人一倍あるみてぇだ…どう来るか分からねぇし俺は骨の折れる奴の相手はしたくなくてよぉ。…だったら、”動けなくさせちまえ”ばいいんだよ。お前の可愛い可愛い弟らしいなぁ?その弟のおつむ吹き飛ばされたくなかったら…俺の許可無く動くんじゃねぇぞ。」


「…外道が。」


「何言ってんだよ、俺はお前に選択肢をやってんだよ。俺らから逃げるには弟さえ差し出しゃ見逃してやる。それが嫌なら、黙って突っ立ってろよ。」


男はボキボキと指を鳴らして神来斗の前で立ち止まる。

神来斗は目の前の男を睨み付けた。

少し考えた後神来斗は手に握っていたナイフを横に投げ捨てた。

その様子を見た男は口角を吊り上げ恍惚の表情を浮かべた。


「話が早くて助かるぜぇ…たぁっぷり可愛がってやるよ。」


瞬間、男の右拳が神来斗のみぞおちを深く抉った。


「うぐっ…!!」


痛みに目を開き、足の力が抜ける。

片手でみぞおちを押さえると背中に重く鈍い痛みが走った。

バランスを崩し頭から地面に突っ伏す。


「うっ!!…っ!!」


一方的な痛みに蹲る神来斗を、残りの男達が鼻で笑い飛ばす。

泥臭い靴に顔を蹴り上げられ仰向けに倒れる、腹部に全体重を受け取った男の足が落ちてきて唾液が飛ぶ。


「あ"っ…ん…ぐっ…」


「もっといい顔見せてくれよぉ?反応の薄い奴程ムカついてきちまうからなぁ。」


痛みを堪え男を見上げる。

期待と悪意に満ちた顔に、神来斗は息が漏れる様に笑い飛ばした。


「反応の薄い…か、そいつはお前の拳や足じゃ、力不足で反応出来ないの間違いだろうな。」


「あ…?」


「いいぜ、このまま俺は手は出さねぇよ。…俺は、お前らみてぇに暴力に任せる事はしない主義なんでな…。好きなだけ、地に堕ちてろ。」


神来斗は挑発的な顔で嘲笑う。

男は血管を浮き出せて怒りを加速させた。


「俺はな…てめぇみたいなスカした文句垂れが一番嫌いなんだよっ!!」


「ぐぁっ!!」


男は怒りをバネに力一杯神来斗の脇腹を蹴る。

ゴロゴロと転がる神来斗を追いかけ、男は馬乗りになって顔や胸を殴り続けた。

神来斗は一切抵抗せず、振り下ろされる拳を横目に凛冬に目線を移した。

恐らく口元に当てられた布切れには薬でも仕込まれてたのだろうか、外傷は無いが目を伏せてまるで寝ているかのようだった。


(すまない…凛冬、巻き込んじまった…。もう使わないと決めていたんだがな…背に腹はかえられない。)


降り注ぐ痛みの雨に、最早振動しか感じられなくなってきた。

反応が薄れていく神来斗をお構い無しに殴り続ける男。

本当なら神来斗は、間近に迫る死を男達に跳ね返す手段は分かっていた。

しかし凛冬が人質に取られてる以上リスクは取れない。

隙を突くしかない…そう、その“捨て身”の方法を取るしかない。

口の中が切れ錆びた鉄のような味が広がる、桜の香りはいつの間にか血の臭いに変わっていた。

神来斗の体に力が入らない事を確認し、男は満足気に立ち上がった。

無気力な神来斗の胸倉を掴み、風が吹く崖の淵に強引に立たせた。


「本当にされるがままなんて笑っちまうなぁ?…俺の命令を忠実に守った褒美だ、最後に言う事はあるか?」


息も絶え絶えに、神来斗は凛冬に目線を移す。

恐らくこのままでは、凛冬にも矛先が向くのは明らか。

力が弱い凛冬にこいつらは敵わないだろう…だから、“俺がやるしかない”。

“これ”をやる時は自分の最期の時だと心に決めていた…今であるなら丁度良かったのかもしれない。

吐き出すように短い笑い声を上げ、神来斗は男の目を見る。


「…地獄に堕ちろ、悪党。」


風が神来斗の髪を吹き上げ、いつも瞑っていた左目を開いた。

神来斗の左眼…それは異常なものだった。

強膜は灰のように黒く、瞳を囲うように角膜には六等分された円が描かれていた。

月明かりを反射して不気味に紅い光を放つ神来斗の眼に、男は背筋を凍らせた。

同時に、神来斗の胸倉を掴む手が緩んだ。

神来斗は足に力を入れることは無かった、そのまま崖の外へと身を任せる。

男は脳裏にこびり付いた神来斗の瞳に後退りをしたが、何かがぶつかる音と神来斗の姿が消えた崖を見て笑みを浮かべた。


「…へ、へへ、最後までうぜぇ奴だ。」


暴行を終えた男に、凛冬を抱えた男が欠伸をしながら話し掛けた。


「おぅい、もう終わったか?眠ぃから早く帰ろうぜぇ。」


「あぁ。とっとと帰るか、こいつのおかげで収入もデカそうだしな。」


男は凛冬に近付き前髪を掴んで顔を上げさせる。

凛々しくも中性的な顔に舌舐りをしながら、頭の中で札束を数え始める。


「年頃の男だしタバコ酒やってる訳じゃねぇみてぇだからなぁ〜内蔵に血液に…こりゃあ億行きそうだぜ。」


「しかもこいつ、見た目からしてアルビノだろ?適当な愛好家に吹っ掛けたらさらに金額跳ね上がるんじゃねぇの?」


「いや…こいつはアルビノじゃあねぇ。ちょっとレアな人種ってだけだな…この見た目の奴は外国じゃ割といたりする。」


「はぁ〜?つっまんねぇの。ならとっとと帰ってバラまこうぜ。」


「そうだな、とっとと金にしちまうか。」


男が上機嫌に腰に手を当てる。

待っていた男二人が帰路につこうとするのを見届けて歩みを進めようと足を上げた瞬間、後ろから月明かりに照らされた刃が男のうなじへと垂直に薙がれた。



次回⬇⬇⬇⬇⬇





《to be continued…》

次週、2025年6月21日(土曜日・夜頃)

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アロア・レイス

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