201X年某日。
私は場末のスナックのような、関東と言えど決して有名ではない土地で水商売をしていた。
そこで出会ったのが、彼。しょうくん(仮)
オープンからまだ数分の時、数名のグループが入店した。
待機場所から、いらっしゃいませ〜と頭を下げていた私。顔を上げた瞬間。
所謂一目惚れ。なにあの人、超かっこいい!
まだ入店して間もない私。彼らは特に指名がいる訳ではないフリーで入店する数名のグループで、お店の常連だった。
他の女の子は彼らのことはよく知っていたが、私は初めまして。
たまたま、本当にたまたま、彼の隣につくことになった。
常連だから指名しなくとも女の子達もみんなしょうくん達の事知っているから、会話はみんなで盛り上がっていた。
入店から日が浅い私は、会話に入れない。
ただ笑顔で相槌を打つ事しかしていなかった。
そんな時しょうくんは私に話しかけてくれた。
私をみんなの会話に入れてくれるように、2人で盛り上がるのではなく、自然に話しに入れるように。
水商売歴は長かったから、気遣いが出来る人なんだと思った。
しょうくんに、新人さん?可愛いね、好きな女優に似てる。そう言われたのを今でもおぼえてるよ。
俺、嫁と子供いるの内緒ね、そう周りに言ってさりげなくアピールしていたのも。
お店の常連さんは、特にしょうくん達のように団体でくるフリー客は、いくら営業しても指名を貰える確率は少ないとわかっていた。
店長から、この人達は指名をする人たちじゃない。いつもフリー、と聞かされたから、そんなお客様には名刺を渡すこともしなかった。
だから帰り際、隣についたしょうくんに名刺を渡さなかった。だって客にならないと思ったから。
けど、帰る時エレベーターに乗る本当の直前、しょうくんにメールアドレスを聞かれた。当時はLINEはなくガラケーで、赤外線。笑
まぁ店の常連でグループで来る客だから、客になって指名が取れたらおいしいとは思った。
けどそれ以上に、しょうくんにアドレスを聞かれたこと、帰ってすぐにメールが来たことが嬉しくて、店の先輩にすぐ話した。
しょうくんかっこいいですね、アドレス聞かれました!!照
先輩は、え?イケメン?ほんと趣味悪いね笑
そんな事を言っていた。
もしあの日出勤してなかったら、あの時しょうくんの隣に座らなかったら、メールアドレスを聞かれなかったら、今こんなに辛い思いをしなくて済んだのかな。
だとしたら、付け回ししていた店長を恨む。笑
何年経っても私は貴方に出会った時のこと、はっきり覚えているよ。
きっと貴方は忘れてるだろうけど。
そんな数年前の私と彼との出会い。